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児童手当の特例給付を廃止して日本は本当に大丈夫なのか?

11月6日の産経新聞のネットニュースで「児童手当の特例給付の廃止」が記事になりました。

 

<独自>児童手当の特例給付、廃止検討 待機児童解消の財源に(1/2ページ) - 産経ニュース

 

これについて、ネット記事やTwitterでは主に反対の声が上がっています。

 

この児童手当の特例給付廃止の検討については私も反対ですが、その理由を整理しておきます。

 

 

 

記事の内容

 

産経新聞の記事では

(1)児童手当の特例給付を来年度中に廃止する方向で検討に入った

(2)現在は夫婦どちらか所得の高い方で所得判定をしているがそれを世帯合算とする基準に改める方向

の2本立てで検討されているとなっています。

 

児童手当の特例給付とは?

まず児童手当の特例給付とは何か。

 

民主党政権下、民主党のマニュフェストとして「子ども手当」が創設されました。

 

民主党のマニュフェストは、民主党政権以前にあった「児童手当」(3歳未満は月1万円、それ以降は小学校卒業まで月5千円(ただし第2子以降は1万円の支給))を廃止し、「子ども手当」として子ども1人につき月2万6千円を支給するというものでした。財源の問題で満額支給は頓挫して、月1万3千円を15歳まで、所得制限なしで支給するということで、子ども手当が開始されました。

 

民主党は、財源が確保でき次第マニュフェストである2万6千円を支給する予定だったようですが、この間に東日本大震災が起こり、結局財源確保のめどがつかないまま、「子ども手当」は「児童手当」に戻り、中学校卒業まで月1万円、ただし3歳未満は1万5千円が支給されることとなり、今に至っています。

 

そして、「子ども手当」から「児童手当」に戻ったタイミングで、子ども手当では廃止されていた所得制限が復活しました。ただし所得制限を超えた世帯については、月5千円の「特例給付」が支払われることになりました。

 

これが「児童手当の特例給付」です。

 

この特例給付、別に所得制限を超えたら0円だとかわいそうだから5千円だけ残したというわけではありません。

 

実は子ども手当を導入する際、バーターで年少扶養控除(所得税38万円、住民税33万円の控除)が廃止されました。

 

年少扶養控除を廃止して子ども手当を創設したのに、2年後、児童手当になったら所得制限を設けて手当を0円にすると、2年間で行われたのは、中高所得の子育て世帯へのただの増税になってしまいます。

この年少扶養控除の廃止部分を補填するという点もあり「児童手当の特例給付」が創設されたと記憶しています。

 

さて、この特例給付を廃止しようとするのが、今回の検討案の(1)です。

 

 

世帯所得合算への変更とは

現在児童手当は、夫婦どちらか所得の高い方で所得制限の判定がされています。

 

現在の所得制限は、以下のようになっています。

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児童手当の所得制限

サラリーマン共働き核家族で子どもが1人の場合、扶養親族1人のところの875.6万円程度が、子どもが2人の場合は扶養親族2人のところの917.8万円(いずれも給料額面)が、現在の所得制限のめやすです。

 

ここで、共働き家庭の世帯収入の状況を調べてみることにしました。

 

賃金構造基本統計調査によると、現在大学卒・大学院卒の30代男性の収入平均は502万円、同じく大学卒・大学院卒の女性の平均収入は433万円です。

 

大卒30代夫婦で子ども2人、平均的な収入の家庭の場合、現在は男性の502万円で所得判定をされますので、所得制限にかからず、満額である1万5千円(3歳以降は1万円)の児童手当がうけられます。総額では210万円程度(4月産まれの子が最大で234万円)になります。子ども2人分だと420万円です。

 

これが、所得制限を世帯合算になった場合、大卒30代平均的収入の家族の場合、502万円+433万円なので935万円が世帯合算の収入になるので、所得制限を超える可能性が高いです。

 

これが改正案の(2)です。

 

そして、現在は、所得制限を超えると「特例給付」の対象になり、月5千円(総額で90万円ほど)の児童手当がもらえますが、改正案(1)により「特例給付の廃止」にも該当するため、現在の共働き家庭は、いっきに「児童手当の支給なし」になる可能性があるわけです。

 

 

 

世帯合算による所得制限の意味するところ

 

1985年生まれ(現在35歳)の女性の大学進学率は35%程度です。

 

2015年に行われた第15回出生動向基本調査によると、2010年~2014年(現在5歳から10歳くらい)に第一子を出産した女性のうち、産休や育休を取得して仕事を継続した女性は53.1%です。

 

単純に、大学進学した35歳女性が平均的な割合で結婚して出産し、約半数が現在も仕事を続けて平均給与くらいを稼いでいると仮定します。

この場合、30代大卒男女の平均年収の合計は935万円で、児童手当の所得制限を超えます。

したがって、大卒女性35%の家庭のうち出産後も働き続けている53.1%、つまり全体の約17.5%が、今回の児童手当の受給要件の変更で、所得制限にかかることが予測できます。所得制限にかかると、今回の改正案では特例給付も廃止されるので、単純計算では、17.5%程度の共働き家庭は、手当が0円になる計算になります。(国民生活基礎調査では、年収900万円以上の子育て世帯は子育て世帯全体の25%程度です。)

 

記事では、改正案での財源の削減効果は900億円とでていますが、これは「特例給付廃止」のみの金額です。

 

特例給付以外の児童手当の予算総額は、平成31年度予算で2兆386億円です。今回の改正案で所得制限を超える家庭(平均的大卒夫婦家庭)は全体の17.5%ということになりますから、2兆386億円の17.5%分、3,567億円分の児童手当が削減されることになります。

 

つまり(1)の特例給付廃止より、(2)の世帯所得合算のほうが、圧倒的に削減効果が高いです。

 

 

 

私が今回の改正に反対する理由

 

今回の改正検討案が出た時の感想。

 

「え? なに考えてんの?(関西弁)」

 

そのくらい、今回の改正案が理解できませんでした。

なぜなら、今回の改正案は、現在の政府の政策に反した政策になるからです。

私は、主に次の3つの理由で反対しています。

  

・子育て世帯には単純に増税になる

・女性活躍促進に逆行する

少子化対策について対象世帯間の財源の付け替えになっている

 

順に説明します。

 

子育て世帯には増税になる

 

「特例給付」は、上にも述べたとおり、子ども手当の創設時に子ども手当のバーターで廃止された年少扶養控除を補填するために残された給付です。

 

子ども手当が創設され、所得制限なしに全世帯に子ども1人あたり1か月1万3千円が給付されることに伴い、全ての子育て世帯に対し、所得税38万円、住民税33万円の年少扶養控除が廃止されました。

 

38万円の扶養控除が廃止されるということは、年収900万円のサラリーマンの場合、所得税率は20%程度ですから、38万円×20%である7万6千円の所得税増税となります。

同じく住民税はおおむね10%(+均等割額5千円程度)の税率なので、33万円の扶養控除が廃止されると3万3千円の増税です。

 

子ども手当(月1万3千円、年額15万6千円)が創設され、合計11万円が増税になり、そして児童手当に移行して所得制限されるにあたり、年少扶養控除分の増税部分を解消するために特例給付の5千円が設定されました。

つまり11万円増税になっているけれども、月5千円×12か月の6万円は特例給付で残すので我慢してくださいね、ということです。

 

今回、年少扶養控除が廃止されたままで特例給付が廃止されると、年収900万円の子育て世帯は、10年前より11万円は確実に増税になります。

しかも国民全体への増税ではなく、16歳未満の子どもを育てる年少扶養控除対象世帯だけピンポイントに増税です。

 

資産があって年金を受給している親世帯を扶養しても扶養控除が受けられるのに、何の収入もなくお金だけかかる子どもを扶養しても扶養控除が受けられない。

 

そもそもこれ、税制として大丈夫なのでしょうか?少子化対策をしたいんですよね?

 

 

 

女性活躍促進に逆行している

 

今回の改正案の(1)と(2)が同時に実施された場合、正社員フルタイム共働き家庭のかなりの割合が所得制限により児童手当の対象外となります。

 

これは女性活躍促進をかかげ、男性の育児休業取得を促進し、女性の管理職割合を上げようとしている政策と、完全に逆行します。

 

 

平成29年に内閣府は「子育て安心プラン」を発表しました。 

www.kantei.go.jp

 

このプランの中で、「令和2年度末までに、女性のM字カーブ(※)を解消し、女性就業率80%を目指し、そのための待機児童の受け皿の整備をする」としています。

 

※M字カーブとは、女性は出産で就業を止めるため、出産のタイミングでMの字の谷の部分のように就業率が低下することを指します。

 

女性の就業促進の目的は、法律上の建前はいろいろありますが、まあ本音では、少子高齢化に伴う労働力の減少を補うことです。労働人口が減るので、今まで働いていなかった女性の方々、ぜひ働いてくださいねということです。

 

 日本の社会の現状は、女性が子どもを産むと働き続けることが難しく、女性が働き続けようと思うと子どもを産むことが障壁になっています。

 

つまり、女性の就業促進と少子化対策は、根本的には相反する政策です。

 

この相反する政策を両立するためには、それぞれに財源をつけて、それぞれ対策を取る必要があります。

 

しかし今回の改正案は、働き続ける女性のいる世帯から児童手当の財源をぶん取ってきて、それを待機児童対策に使おうとしています。

 

え?女性活躍はどこいった?もう働かなくていいの?という方針になっています。

 

待機児童対策の予算ってどのくらい?

 

しかもぶん取ってくる財源は、特例手当廃止の900億円だけでなく、世帯合算による所得制限で特例手当対象になりそうな世帯分の3,567億円もあります。合計で4,467億円です。

 

令和2年度の厚生労働省の予算では、保育園の整備など保育の受け皿確保のための予算は、1,144億円でした。保育園の整備などは国と地方自治体が半分ずつ負担するので、令和2年度の保育の受け皿確保の費用の予算は、日本全体では2,288億円です。

 

ちなみに、令和元年度の厚生労働省の予算では、保育の受け皿確保の予算は1,188億円で、1年間で44億円(日本全体では88億円)も減っています。これは、少子化により子どもの数が減ったから、予算を減らしたのだと思います。

 

年々予算を減らしている保育の受け皿確保の予算を確保するために、1年間の総額の予算を超える4,467億円を児童手当から取ってくる必要があるのでしょうか。

 

世帯合算で所得制限を判定するということは、女性活躍促進をやめて共働き家庭から3,567億円を取ってきて、少子化対策をするということと同義です。政府はそういう方針なのでしょうか?

 

今までの女性活躍促進の旗振りは何だったのでしょうか?ん、幻?本当に疑問です。

 

 

少子化対策について子育て世帯での財源の付け替えになっている

 

さらに問題だと思うのは、今回の改正案は、「子育て世帯」対象の児童手当を、同じく「子育て世帯」を対象とする待機児童対策に充てようとしているところです。

 

何かの施策を推進しようとする場合、お金が必要になります。しかし役所の財源は税金のみなので、何か新しいことをしようと思ったら、税金を増やすか、他の政策を止めて新しい政策にお金を回すかの2択です。

 

普通、何か新しく進めたい政策があれば、その分野とは別の政策を見直してつまり廃止して、進めたいところにお金を持ってくるのが「政策を進める」ということです。

 

しかし、今回の改正案では、子育て世帯から子育て世帯へお金を回しただけであり、これでは新たに推進することにはなりません。

 

しかも取ってくる財源のほうが、予算でついている、つまり必要と霞が関が考えている財源より大きいです。残った財源はどこに持って行くつもりなのでしょうか?

 

 

菅義偉総理は、所信表明演説で「長年の課題である少子化対策に真正面から取り組む」と発言されています。

 

しかし、少子化対策の柱となる子育て世帯・出産可能世代からお金を取ってきて、また子育て世帯につけかえるだけの状態で「少子化対策に取り組」んでいると言えるのか、疑問です。

 

 

 

増税した消費税はどこへ?

 

そもそも待機児童対策は、消費税増税分で行う予定でした。

 

財務省のホームページによると2019年10月に消費税が増税された際、この消費税の財源をすべての世代を対象とする社会保障のために使うとしており、具体的に消費税率の引上げで実現する政策として、「待機児童の解消」を上げています。

 

消費税率引上げについて : 財務省

  

そう、「待機児童の解消」は、消費税増税分で賄う予定だったはずです。

なぜいまさら、待機児童対策で、児童手当の財源を必要とするのでしょうか?

 

消費税の増税分は一体どこに使われているのでしょうか?

 

 

わが家への影響はあまり大きくはないです

 

わが家は上に例示しているような、かなり平均的な所得のフルタイムサラリーマン共働き世帯です。

 

ですので、世帯合算の所得制限になった場合は所得制限に当てはまることになり、現在児童手当を1万5千円もらっていますが、特例給付もなくなればいっきに児童手当は0円になります。

 

正直なところを言えば、児童手当が0円になっても「言ってたことと違うやん!」と思いますが、悔しいなあとは思いますが、子どもの生活への金銭面の影響はそれほど大きくありません。子が希望すれば留学させてあげたかったけど無理かも、くらいはありますが、将来の計画がそこまで大幅に崩れるわけではありません。

 

児童手当分の子ども1人210万円は大きな額ですが、わが家は子どもが1人なので、なくなれば生活に困るというわけではないということです。 (もし子ども3人なら、大きく影響があります)

 

でも社会には大きな影響があります

 

しかし、この「言ってたことと違うやん!」というところがかなり曲者で、仮に産経新聞の記事にあるような児童手当の改正が行われた場合、国に対してかなりがっかりしますし、信用できないと感じます。

 

そもそも税の制度を改正してまで制度を作った手当を、財源だけを目的に廃止するなんて普通はありえません。

 

税って、どう頑張っても国民がどうにかできるものではありません。

 

「手当出すから、控除減らすね」という約束さえ、10年でやぶってしまう国に対して、「少子化対策するからね。子どもを育てやすい社会にするから、だから子ども産んでね」と言われても、全く信用できません。

 

同じ観点から、「女性活躍促進するからね」も、信用度0です。

 

こういう信用の失い方は、国の将来の政策にすごく影響が出ると思うのです。

 

今回、国が負担増のターゲットにしているのは子育て世帯です。これからの超高齢化社会を労働者として支えて、社会を支える子どもを育てて、介護までする世帯です。

さらに、改正案で一番影響を受けるのが、正社員共働きで、仕事も育児もやろうとしている、けっこうまあ奇特な、まだ少数派の、パワーのある世帯です。

 

100兆をこえる国家予算のたった0.3%のお金のために、子育て世帯からの国への信頼を失って、何かいいことがあるのか、いい国になるのか、私には本当に疑問です。

 

 

最後に

というわけで、私は改正案に反対です。

しかし、ブログで文句を言っていても、まあただの愚痴であり、あまり役には立ちません。

 

そこで今回の改正案を何とか考えなおしてもらうため、できる方法を考えてみました。

 

・知り合いの国会議員に反対だと伝える(そんな知り合いいるのか疑問ですが…)

・選挙の際に、改正案に反対した国会議員に投票する

・国に意見を出してみる(パブリックコメント) 

各府省への政策に関する意見・要望|電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

ご意見募集(首相官邸に対するご意見・ご感想) | ご意見・ご感想 | 首相官邸ホームページ

自民党に意見を出してみる

自民党へのご意見フォーム | ご意見フォーム | 自由民主党

SNSでつぶやきまくる(#児童手当特例給付廃止に反対します など)

 

できることから始めていきたいと思います。

 

(続きを書きました)

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