警察署にて
先日、運転免許の更新のために、最寄りの警察署に行きました。
私の前に並んでいたのは、見るからに80歳を超えた、身なりの良いお爺さんでした。
定年はゆうに超えているであろう年齢で、かなり質の良いスーツをきちんと着用しており、スーツには社章らしきものもついています。ただし、歩き方は少しおぼつかない感じで、安定していません。
警察署の来庁者駐車場には私の車のほか、2台の車が駐車されていましたが、そのうち一台は、私でも分かる高級車でした。
運転免許窓口には、私とお爺さんのほかの来庁者はいません。
ああ、あの車に乗ってきたお爺さんなのかな、歩き方もおぼつかないし、なんだか危なそうだなぁとと思いながら、前の手続きをぼんやりと眺めながら待っていると、どうも様子が変なのです。
係員の女性警察官が、手続きの説明をしているのですが、明らかにお爺さんと会話がかみ合っていません。
おそらく、高齢者講習の受講が必要で、それを受けた後でないと免許更新はできない、免許更新の手続きより先に高齢者講習の受講をして欲しいという話をしているのだと思うのですが、お爺さんに全く伝わっていません。
お爺さんの対応は別に不遜な感じではありません。それなりに話を聞く姿勢です。
しかし話の内容は全く理解できていない様子なのです。
見た目には80歳を超えているお爺さんです。おそらく前回の免許更新でも、高齢者講習の受講対象になっていたはずです。警察官の方も、「前回も受けられているはずですが」とおっしゃっています。それでもお爺さんは全く理解できている感じではありません。(72歳以上の方の運転免許有効期間は3年で、高齢者講習が必要になります。)
途中、上席の警察官も同席し10分以上やり取りをした後、らちが明かない、もしくはこのまま免許更新に進ませるのはまずいと判断されたのか、お爺さんは女性警察官とともに違う場所に連れられていき、上席警察官はさらに上席に相談しながら、どこかに電話をしていました。
このやりとりを見ながら気が付きました。
高齢者の運転問題は、すごく身近な問題なのだと。
池袋暴走事故は、決して遠くの町の話ではないのだと。
急に身近に感じた池袋暴走事故
池袋暴走事故のニュースを見たとき、いくら事故後とはいえ、両手に持った杖で震えた足を何とか支えながら現場検証に立ち会う被告人を見て、衝撃を受けました。
被告人の身体機能が、池袋のような人の多い場所で求められる緻密な運転技術を満たすとは思えなかったからです。
しかし、私の見たお爺さんも、池袋暴走事故の被告人に近い身体機能に見えました。他の場所に連れられる際も、係員の警察官に身体を支えられて何とか歩いています。
訪れた警察署は、車通りも人通りも多い場所にあります。道幅も狭く、私でも運転にはかなり気を使います。
あの身体機能と認知機能のお爺さんが、あの高級車でここまで運転してきたのかと思うと、被害者と同じ3歳の息子を持つ母親であることも重なり、自分が起こす事故だけではなく、巻き込まれる事故にも注意を払わないといけないと強く感じました。
高齢者の運転問題に思うこと
池袋暴走事故以外にも、高齢者の運転で若年者が命を落とす事故が多発しています。しかし、現在の免許制度は、警察が強権的に免許更新を辞めさせることや、免許返納を求めることが出来る仕組みではありません。
高齢者講習は、これまで当たり前のように車の運転をしてきた人に対して、運転免許証の返納をすすめるために行われるものであり、免許を取り消すことを目的としたものではないからです。
すなわち自主返納を自覚させるためのものなので、身体機能や認知機能の低下により運転に適さない場合でも、本人に自主返納をする気がなければ、免許を取り消すことはできないのです。
では、高齢者の運転問題に対応する手段はないのでしょうか。
私は、まずは行政が制度を変え、それからメーカーと高齢者の家族が努力をすることが必要だと思います。
行政がすべきこと
行政については、まず運転免許の適用年齢を制限できるよう制度を変更することです。
現在、自動車の運転免許は18歳から取得できます。年齢の下限があるのですから、同様に上限年齢を設けることも可能なはずです。
ただ、一律に年齢だけで切るということは現実的ではありませんから、上限年齢を超える場合は、高齢者運転免許という新たな仕組みの免許を取得させる制度に改正します。
そして、高齢者運転免許取得の際には、現行と運転免許取得と同等の講習や試験を課します。
これにより、上限年齢を超える場合は、新たな免許取得の費用や講習受講が必要になり、必然的にあまり運転を必要としないペーパードライバーは排除されます。
続いて、車の販売と車検についても制限を課し、高齢者運転免許取得者には、日本の技術を結集した安全運転装置がついた車しか販売できないようにします。
また車検についても、高齢者運転免許取得者の所有する車は、一定の安全運転装置が装備されていないと車検を通らないようにします。
これにより、必然的に高齢者運転免許所有者は、安全装置のしっかりついた車を所有・運転することになり、池袋暴走事故のようなアクセルとブレーキを踏み間違えて衝突事故を起こし大きな被害を生むことが日本の高度技術で回避されます。
高齢者運転免許取得者は、新たに安全運転装置の付いた車の購入や車検対応が求められますが、新たな車の購入には一定額の減税措置を行い、購入者の負担を減らしながら、もちろん高齢者の自己負担を求めます。これにより、安全運転装置のついた車を購入できないような高齢者は、必然的に運転を止めて免許を返納する動機になり、高齢者の運転手を減らすことができます。
これらの行政の取組は、都道府県や地域の実情に応じてある程度の幅を持たせることとします。
例えば東京や大阪などの人口の多い大都市なら高齢者運転免許は70歳から、過疎地は75歳からと幅を持たせます。
安全運転装置も東京や大阪は最新ものが必要、過疎地はもう少し緩やかなものでOKとするなど、柔軟に対応するなどで、過疎地では車がないと生活できないというような現在の過疎地の実情に対応することができます。
なお、過疎地の免許で東京や大阪で運転をすると違反になります。
高齢者運転免許の違反者は通常運転免許と比べて免許取消などの措置を強化する(累積点数が低くても免許取り消しとなる)ことで、該当地域以外での運転を抑止するほか、違反が累積する運転手は免許取消になり排除されるので、高齢者の運転レベルを高度に維持します。
メーカーができること、メーカーに求めること
メーカーには、安全装置などの技術強化のほか、後付けでも安全装置などを付けられるような技術を開発し、地域に応じて安全装置を選べるようなオプション化を進めてもらいます。
また、高齢者運転免許所有者のニーズに応じた車の開発(安全装置は高度だが、他のオプションは低く抑えて車自体の価格を低くするなど)も同時に進めます。
日本の車メーカーは、他国にはない高度な技術と、高度な倫理意識を持っています。
高齢者が人を殺さなくて済む車を、高齢者が手に入れられる価格で提供できるよう、ぜひ力を入れてもらいたいです。
高齢者の家族ができること
高齢者の家族は、むやみに安全装置のついていない自分の車を貸さない、運転させない、自分名義で高齢者の代わりに車を購入しないなどのモラルを持つ他、過疎地の親を抱える場合は、求められる水準の車の買い替えへの応援(金銭面も含む)などを行う必要があります。
また、高齢の家族に対し、高齢者運転免許の制度周知や更新の方法、自動車の新規購入を手伝うことも必要になります。
私の周りも、私自身も、まだまだ現役だと思っている親世代に、なかなか運転免許の返納をさせることができていません。
他人にはあーだこーだ言えますが、実際に親に印籠を渡すのは、今後の親子関係も考えるとあまり強く言い出せないのが現実です。
今の自主返納を求める制度では、いくら家族が「ちょっと危ない」と思ったところで、高齢者の運転を止めることができていないのですから、制度が変更された暁には、家族でできることは家族で行う必要があります。
以上のように、制度を変える、人の意識を変える、技術を高めることにより、高齢者の運転問題に一石投じ、若年者が高齢者の無謀な運転の犠牲にならいような社会を作っていくことが必要です。
運転免許更新を終えて
さて、警察署で行っていた運転免許更新ですが、私が免許講習の受講を終えたころ、窓口の待合で再びあのお爺さんに会いました。
手続きをしていると、お爺さんの会社の人?(家族には見えなかったが若い人)が迎えに来ました。
係員が、このまま運転して帰すのは危険だと判断し、代わりに運転できる人を呼んだようです。
正直、ほっとしました。
警察署の係員の方、お疲れ様でした。
あのお爺さんが、今の返納を強制できない運転免許更新ルールの中で、自主的に運転免許を返納してくれることを、祈ってやみません。
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