東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の「女性がたくさん入る理事会は時間がかかる」という発言が話題になっています。
この発言について今考えていることを記録しておきます。
個人的には
そう思っている人、多いだろうな
と思っています。
この発言が適切だとは全く思いませんし、これを東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長職にある人が発言すべきものでもないのは大前提です。
このコロナ禍のなかで、7月にオリンピックパラリンピックを開催するのかどうか世界から注目されている時期に、日本の会長がこのような発言をすること自体、世界から見たら失笑に値するものでしょう。
ただ、あの発言についてマスコミから総バッシングを受けていますが、バッシングを受けたからと言って、会長の考え方が「男女平等の世の中だから自分の発言は間違っていた」と変わるとは思えません。
「やってしまったな」「あの場で会長の”オレ”が言うべきではなかったな」と反省するかもしれませんが、今後会長が生きていく中で「女性も男性も全く平等だ」と考え直すとは、到底思えないのです。
ワイドショーでコメンテーターの方がコメントしていた内容で「あの発言がどこかの会話でうけた(笑ってもらえた)のだろう」「それを受けて、受けを狙って発言して滑った」とおっしゃていて、私も同じ感想を持ちました。
そして「どこかの会話でうけた」とき周りにいて笑っていた(おそらく会長と同年代の)高齢男性の方にも、あの発言の問題の本質は、おそらく今でも分からないままなのだともいます。
日本は65歳以上の高齢者は3,617万人(28.7%)、そのうち男性は1,573万人です。男性の人口の25.7%、4人に1人は高齢男性です。
ですので、個人的には「会長と同じように思っている男の人、多いんだろうな」と思っています。65歳以上の方は、女性の社会進出が叫ばれた時代に社会人時代を過ごしていませんから、本質的に男性も女性も同じように働いて同じように評価されるという土俵で生きてきていません。
女性の社会進出は男性の犠牲のもとに成り立つ?
女性の社会進出が進むにつれて、社会の中、会社の中で「男女平等」「女性差別解消」が求められるようになりました。
私は女性ですから、能力にかかわらず簡単な仕事のみを押し付けられることも、出世にガラスの天井があることも、理不尽だと思っていますし、解消して欲しい、解消すべきだとも思っています。
しかし、例えばガラスの天井の解消について、社会の中での「管理職の数」は増えないわけですから、今まで管理職になっていなかった女性を「管理職」にすれば、必然的に男性の管理職の数は減ります。
女性側から見たら、これまでは能力のある女性を管理職にしていなかっただけという感想でしかないのですが、女性の管理職が増えることであぶれてしまった男性管理職候補の方から見たら、自分は女性の社会進出のせいで昇任できなかったと思うでしょう。
女性活躍促進が叫ばれるようになり、女性の管理職割合の目標が出されたことで、いわゆる「(能力がないにもかかわらず)女性だから管理職になれた」と陰口をたたかれる女性が出てきました。
確かに目標割合だけを声高に叫べば、能力がないのに昇任する女性も出てくることは事実です。
しかしその何倍も何十倍も「能力があるにもかかわらず昇任できない(昇任できなかった)」女性がいることには気づいていません、もしくは見えないふりをしています。
隣の女性より能力がないのに昇任する男性は、隣の男性より能力がないのに昇任する女性の何十倍も何百倍もいましたし、これからもいます。
しかし、これまで女性に社会進出をさせないことにより結果的に優遇されていた男性がこれを認めるのは、かなりの苦痛を伴います。
特に、幼いときからスポーツでも勉強でも競争社会に置かれて、チームワークやリーダーシップを磨かせられていた男性にとっては、自分のアイデンティティを根底から覆すことにもなりかねません。
私は、男性が「女性の社会進出に消極的」になるのは、男性自身の防衛本能もあるのではないかと考えています。
女性の社会進出は我々男性の犠牲のもとに成り立っていると思い込むことで「自分は能力がないから昇任できない」ということを何とか受け入れている最中なのかなと思っています。
なおこれは現役世代の話であり、オリパラ組織委員会会長のような年代の方については、女性活躍促進以前に、女性を会社の一員とはみなさないことが当たり前の時代を生きてきて価値観を醸成してきた方々ですから、そもそも「女性が組織に入ってくる」ことは、時代が変わったなくらいの感想でしかないのではないかと予想しています。
なので、時代は変わったな、女性が入ってくるようになって会議が長くなったな、という感想を述べたらちょっと笑ってもらえたので、それをそのまま発言しただけなのかなと。
私たちがすべきこと
会長の発言の話に戻ります。
今回の発言の本質的な問題点は、女性は社会組織には入ってこないことが普通だ、入ってこない方がいいんだという感覚を持っていることです。そしてそれを外(世界)に向けて発信していることです。
女性は社会組織に入ってこない方がいいんだと思いこむことは、男性は当たり前に持っている社会に出るという選択肢を女性には与えないことですから、実は女性差別そのものです。
しかし当該男性はこれが女性差別だとは思っていません。妻を働かせず俺が働くことで妻が苦労しないように生活させているじゃないか、妻を大事にしているじゃないかと、おそらく疑いなく信じています。
差別していることにすら気づいていない、これがあの発言の本質的な問題点です。
このことを前提に、今回の問題を受けて私たちがすべきことは、「あの発言は(思っているくらいはまあいけれども)外に向けて出すことは許されない」という雰囲気を醸成し会長世代の方々に感じてもらうことです。
このために一番「効果的」なのは、会長があの発言を受けて辞任に追い込まれることです。辞任にまで追い込まれれば、いくら本質的にはあの発言の問題がわからない高齢者であっても「言ってはいけないことなんだ」ということくらいは気付きます。
(私は個人的には会長が辞任しようがしまいがどちらでもよいと思っています。女性の社会進出を阻む、女性差別を助長する害悪を打開する手段として効果的という話です。)
ただ、これも予想できていたことですが、会長の辞任を進言したり決めたりするのは、同じ高齢者世代の偉い方々ですので、今回も辞任したり責任を取って何かをしたりということを会長に求められる可能性は低いでしょう。高齢男性の方々には「あの発言はまずかったのか」と感じることはできても、発言の本質的な問題点までは理解できません。
そして会長自身も本質的には発言の問題点を理解していないわけですから、自発的に辞任したり責任を取ったりすることもないのでしょう。80歳を超えて政治の世界にいる方に、これまでの価値観を変えてもらうなんて無理です。
※追記
2021年2月11日に辞意を表明されました。びっくりしました。
だから、社会の側が「その発言は許されない」と思わせないといけないのだと思います。
というか、何の権限も持たない若い私たちができることは、そのくらいしかないのです。
仮に会長が辞任しなくても、「あの発言はまずかった」と社会が大々的に表明すれば、会長世代はともかく、その下の現在の管理職世代は発言を慎むように、気を付けるでしょう。あのような発言をするとバッシングを受けるのだと。
この「気を付ける」が普通になれば、少なくとも声高には「女性を社会組織の一員にしたくない」とは言えなくなります。
私が今回ちょっと良かったなと思うことは、マスコミがこの発言を取り上げていることです。マスコミの中に「この発言は問題だ」「少なくとも問題だとして取り上げる価値がある」と判断した人が増えたからこそ、ニュースになりワイドショーになり新聞に掲載されることになりました。
おそらく20年前ならここまで取り上げられることはなかったでしょう。30年前なら問題にすらならなかったでしょう。
女性の社会進出を心から賛成していなくても、応援しているわけではなくても、女性のせいで昇任できなかったと心では思っていたとしても、「女性に社会進出をさせたくない」というネガティブな発言をしなくなるだけで、社会の空気は変わるのではないかと私は思っています。
牛歩のごとくですが、今回の問題がこれからの社会を変える一歩になればいいなと思っています。
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