ワーキングマザー陸マイラーが今日も行く

フルタイム共働きのワーキングマザーです。陸マイラーもやっています。

ワクチン狂想曲

 

新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関し、たくさんの混乱や批判が生じています。

その原因を考えてみました。

 

 

 

 

高齢者にネット申込は妥当だったのか

 

ワクチン接種については、まず医療従事者が優先接種の対象となり、続いて高齢者のワクチン接種が始まりました。

医療従事者のワクチン接種に対応しているのは都道府県で、高齢者のワクチン接種を調整しているのは基礎自治体である市区町村です。

 

東京ど真ん中の大都市と、山村や離島では、医療体制が大きく異なります。そのためそれぞれの自治体で、自分のところに一番合った方法を選べるように工夫されています。

 

しかし、この工夫が混乱を生じさせています。

 

高齢者のワクチン接種における自治体の工夫の一つに、接種券を一斉に配って「平等」に先着順で受け付ける体制があります。電話受付とネット受付があり、なるべくネットでお願いしますというものです。

 

いくらインターネットやスマートフォンが普及したとはいえ、高齢者にネット申込推奨などどう考えても妥当は思えません。しかも一斉申込のシステムです。結果、予想どおり予約システムはサーバーダウン、電話もパンク予約システムも混雑で使えないと大混乱です。

加えて高齢者が自分でネット申込できないとどうなるか、子や孫に「申込をしてくれ」という依頼がきます。代わりに行った若年・壮年世代も、申込サイトや電話のつながらなさに愕然とし、「ワクチンの予約は全然取れない」という噂が広がります。

 

確かに申し込みを受け付ける受け手(自治体)からすると、人手も手間もかけずにデータ管理ができるネット申込を取り入れられれば業務は楽ですが、人口がそれなりにいる自治体で、高齢者が一斉に申込に殺到すると混乱することや、いくらワクチンは全員にいきわたると説明しても我さきに窓口に集まってしまうことは、先の一律10万円給付の事例でも分かっていただろうと思います。

 

 

残念な平等主義

 

ではなぜ、このような一律申込の仕組みを採用する自治体が多いのか。

この一律接種券配布一律申込受付は、極端な平等主義(特に機会の平等)に走った結果なのだろうと思います。

 

ワクチンの配布量(確保量)はある程度見えていますから、接種の日を決めて接種権を配布する、年齢別(高齢順)に細かく区切って受付する、地区ごとに集団接種会場を設置して日にちを変えて順に接種を行うなど、取りうる方法はいろいろあったと思いますが、人口の少ない自治体の方がこういった工夫を凝らし、逆に人口の多い自治体は一律受付の方法を選んでいるようです。

 

この極端な平等主義は、住民のクレームへの対策なのでしょう。

 

地区ごとに日程を振り分けて接種を行う場合、大きな自治体では小さな自治体と比べて接種人数が多いため、どうしても接種期間が長くなりますから、「うちの地区は接種が遅くなる」「私の接種日が遅い」というクレームが発生します。

こういった自治体が生じさせた「差」に対するクレームは、「差」を享受できない個人が自分の利益のために出してくるクレームですから、「差」がなくならない限りクレームもなくなりませんし、自分は自治体によって不利益を被っていると思っている個人を納得させる対応方法もありません。

なぜその方法を採用したかの説明はできますが、「差」を享受できない個人に対して「差」を納得させる方法はありません。

一方「一斉に受付を開始した結果、あなたの申し込みが遅かったので接種日が遅くなった」というのは、行政が一方的に作った「差」ではありませんから、クレームとしては対応がしやすいし納得もさせやすいです。「こちらは平等にやりましたので仕方ないですよね」ということです。

 

本来の行政の仕組みは皆を平等に扱うことではありません。出来る限りの結果の平等を作ることです。税金の目的は、お金のある人からお金のない人への所得再分配ですから、税金を使って何かをする時点で平等な制度ではありません。

より困っている人をより多く助けることで「結果の平等」を作り出すことが行政の本質です。

 

しかしこの「結果の平等」を求めると、どうしても個々の比較では不平等が生じます。例えば高額納税者はたくさん税金を納付しますが、低所得者対象の補助金助成金は受けられませんので、納税者間では不平等が生じることになります。


こういった分かりやすい「差」が、クレームの対象になり、このクレームに行政側が疲弊するのでしょう。

 

ワクチン接種は本来「平等」であるべきですが、この平等は「身体の弱い人、高齢の人、重症化したときに治療できる病院が近くにない人に優先接種させることで、その人たちの死亡リスクを減らす結果の平等」か、「皆が等しく同じタイミングでクレームなくワクチンを接種できる機会の平等」か、どちらが本来の行政のあるべき姿なのか、行政の方も私たちも、一歩立ち止まって考えるべきだったと思います。

 

 

裏の優先接種?

 

スギ薬局を運営するスギホールディングスの会長夫妻が、ワクチン接種の順番を早めてもらうよう秘書から市役所に働きかけていた問題で、市長以下幹部が記者会見を開いて謝罪することになりました。

 

他にも高齢者の優先接種で余ったワクチンを市長や幹部職員に接種していたことで、非難を浴びている自治体があります。

 

スギ薬局の問題について

 

スギ薬局の問題における行政のまずい点は、何度も特別対応を断った担当職員を差し置いて、副市長が優先接種をOKにしてしまったことです。

通常「自分を優先して欲しい」というクレームに対して、担当で「NO」の返事をした後に上役にその旨を報告する場合、「さらにあなた(上役)に要望が届いた場合、同じように断ってもらいたい」という趣旨であることがほとんどです。今回の役所の担当者の報告もそういう主旨だったのでしょう。しかし副市長は何を考えたか「優遇OK」にしてしまいました。

 

この問題、おそらく内部リークで発覚したのだと思いますが、機会の平等を第一に第一線で仕事をしている担当者からすると、「優遇OK」とする対応は許せない、考えられないことでしょう。

 

本来副市長がすべきだったのは、こっそりとスギ薬局の創業者夫婦の優先接種を認めることではなく、市の方針として「肺がん患者」や「基礎疾患を持つ人」の優先接種を、広く制度として作ることだったのではないでしょうか。

 

高圧的な口調で何度も「上を出してくれ」と電話で求めたスギ薬局の対応は非難されてしかるべきですが、立ち止まって考えると、スギ薬局会長夫婦のうちの女性側のように肺疾患がある場合、なるべくはやくワクチンを接種したいという希望は理解できますし、健康な75歳より、肺がん治療歴のある60歳代を優先することは、上に述べた「結果の平等」という観点では合理的です。

60歳代だけではなく、壮年層や若年層であっても呼吸器疾患があるなら優先接種対象にして命を守ることは、検討に値する内容です。

 

 

首長のワクチン優先接種に関して

 

また、高齢ではない市長や副市長などのいわゆる「首長」「自治体におけるコロナ対応の中枢の人」のワクチン優先も、その人がコロナウイルス感染症に感染して業務が停滞することのリスクを勘案すると、個人的には優先接種の対象にすればよいと思います。

 

私は自分の自治体の長には優先接種でワクチンを接種していただきたいし、その分接種後にコロナ対応に全力を注いでもらいたいです。少なくとも新型コロナウイルス感染症患者に接する可能性の少ない小規模病院(美容整形や泌尿器科など)や、調剤を行わないような薬局の薬剤師さんより、首長にワクチンを優先接種してもらうほうが結果的に助かる人が多くなりそうです。

 

 

ただ、スギ薬局の問題と同様に首長の優先接種の問題も、きちんと住民に「こういう風に優先接種させます。批判は受け付けますが今回はこうします」と説明してから行うべきでした。

 

今回の問題は、「内緒で」「こっそりと」行おうとしたから問題になったのであって、肺の基礎疾患のある人やコロナ対応をしている役所の役人は優先接種をさせる、それが皆を助けることにつながると正しく告知したうえで行っていたら、大きな問題にはなっていないように思います。

 

 

最後に

 

新型コロナウイルス感染症の拡大により、マスクしかり、飲食店や大規模店舗の休業しかり、自粛要請しかり、ワクチンの集団接種しかり、「今まで当たり前だと思っていたこと」が大きく変わってきています。


今まで当たり前だった「みなに機会の平等を」という考え方は、有事の場合逆の作用を生んでしまうことだってあります。


社会全体が「今やっていることの目的・ゴールは何なのか、どこに設定するのか」ということをしっかり考える必要があります。

そのためには、政府や自治体はその「目的・ゴール」を国民に明確にして共有し、ゴールを目指すために合理的な方法を示して、皆でゴールを目指して進んでもらうえるよう丁寧に説明することが必要なのだと思います。

 

【合わせて読みたい】 

www.workingmother-rikumiler.com

www.workingmother-rikumiler.com

www.workingmother-rikumiler.com

 

 

お役に立てましたら、ポチっとお願いします。ブログ村に遷移します

にほんブログ村 子育てブログ ワーキングマザー育児へ
にほんブログ村