先日Go To Eatキャンペーンの利用方法について記事にしましたが、その直後にオンライン予約サイトを活用したGo To Eatキャンペーンが予算額を使い切ったということで、終了状態になりました。
www.workingmother-rikumiler.com
Go To Eatキャンペーンは10月から開始されたキャンペーンですので、1か月ちょっとでキャンペーンが終了したことになります。これほど早く終了するとは思っていませんでしたが、ではなぜ、7月から始まったGo To トラベルキャンペーンは現在も継続中で1月以降も延長するかもという話なのに、Go To Eatキャンペーンがこれほど早く終了してしまったのか、その原因を考えてみたいと思います。
- 予算額が違う?
- 使いやすさと使う頻度が違う
- 利用者の自己負担額が違う
- 早期に終了したGo To Eatキャンペーンは効果があったのか?
- Go To Eatキャンペーン 次にやるならどうする?
- これからの飲食業
予算額が違う?
まず、Go To EatキャンペーンとGo To トラベルキャンペーンは、予算額が異なります。
Go To Eatキャンペーンの総事業費は1,484億円、そのうち食事券は868億円、オンライン予約サイト分616億円でした。オンライン予約サイト分は、1予約につき1,000円もしくは500円ですので、1,000円のポイントバックでも6,160万人が利用できる計算でした。
一方、Go To トラベルキャンペーンは1兆1,248億円、一人20,000円の最大額を還元する場合は5,624万人分の予算額です。
実は、Go To EatもGoToトラベルも、利用できる数でいうと同じくらいの規模の予算が確保されていました。
しかし現状は、GoToトラベルキャンペーンは予算が余りそうなので期間を延長する可能性があるのに対し、Go To Eatキャンペーンは、1か月少しで予算を使い切って終了ということになっています。
なぜこの差が生じたのかを考えてみます。
使いやすさと使う頻度が違う
Go To Eatキャンペーンは飲食業に対する支援であり、外食に対してポイント還元を行う形で実施していました。
外食は一人でも行けますし、誰かと行く場合も、日時と大まかな場所さえ決めてしまえば予約ができます。家族との外食なら休日にとりあえず予約を入れておいて後で情報共有することも可能ですし、最悪キャンセルも可能です。
また、食事は毎日とるものなので、毎日外食を続けることも可能です。
一方、Go To トラベルキャンペーンを利用するための旅行の予約については、参加者の日程調整や仕事・学校との調整が必要であり、すぐに予約できるものではありません。
また、毎日旅行に行くというのも不可能です(一部のポイ活や陸マイラー界隈ではほぼ毎日旅行の強者もいますが)。
宿だけの予約ならキャンセルもできますが、飛行機込みの予約だと、キャンセル料がかかることも多いです。
この点同じ予約をして利用するという形でも、外食と旅行では、使いやすさと利用できる頻度に違いがありました。
利用者の自己負担額が違う
Go To Eatキャンペーンの開始当初から話題になっていましたが、オンライン予約サイトを利用したGo To Eatキャンペーンでは、予約1名につき固定額である1,000円のポイント還元がされる仕組みです。食事額が1,000円でも20,000円でも、ポイント還元は1,000円分で固定額されているので、鳥貴族やくら寿司など低価格帯の飲食店に予約が殺到しました。
また、Go To Eatキャンペーンではキャンペーンで獲得したポイントで飲食をしてもポイントが還元される仕組みだったので、1,000円の飲食で獲得した1,000円分のポイントで、次回の飲食から自分の持ち出しなしで外食してポイントをまた獲得できるという、いわゆる「無限ループ」の状態でした。
オンライン予約サイトの登録と利用さえできれば、自己負担としては究極は1回の外食分の1,000円が用意できればいいわけです。そして1回外食しポイントがつけば、次はタダで外食ができますから、ポイントがつけばすぐにでも次の外食がしたくなるのが人間というものです。
こういった、持ち出しつまり自己負担がほぼ不要になるシステムだったたため、普段は外食を控えているような低所得の人でも、何度でも外食が可能となり、結果として利用者の利用回数も上がり、のべ利用者数が多くなって、予算が早急に底をついたわけです。
一方GoToトラベルキャンペーンは、予約金額の50%(旅行代金だけで見ると65%)は個人の自己負担が必要なので、65%の旅行代金を負担できる人しか参加しません。
旅行者の自己負担があって初めて成り立つ制度であり、自己負担ができる人のみキャンペーンに参加できる仕組みでした。
また、GoToトラベルキャンペーンは、ポイント還元ではなく、旅行代金を直接割り引くため、貯めたポイントをすぐに使いたい、次々と旅行に行きたいという欲も発生しません。自己負担が出来る範囲で旅行に行くことになりますので、Go To Eatキャンペーンのように次々と利用者が繰り返し利用する状況にはなりにくいです。
なお、GoToトラベルキャンペーンの還元額の上限額は20,000円でしたが、実際還付額の平均は1泊12,000円程度だったようです。GoToトラベルキャンペーンが、利用者の旅行代金の35%の割引という仕組みであり、利用者の自己負担分が発生するため、利用者が還付上限額の対象になる1泊20,000円(旅行代金1泊40,000円)で旅行するのではなく、自己負担ができる範囲での利用にとどまっています。
この結果、予算から割り戻したキャンペーン利用可能者数は5,624万人から9,000万人程度に増え、たくさんの利用者が利用できる状況になっています。
すなわち、Go To Eatキャンペーンは1,000円のみの自己負担で無限にキャンペーンに参加できる一方、GoToトラベルキャンペーンは旅行代金の半額を常に自己負担で払い続ける必要があり、GoToトラベルキャンペーンのほうが自己負担額が高くなるので、繰り返しの利用が控えられているということです。
早期に終了したGo To Eatキャンペーンは効果があったのか?
では1か月少々で終わってしまったオンライン予約サイトを利用したGoTo Eatキャンペーンは、はたして飲食店支援の効果があったのでしょうか。
私は、今回のキャンペーンでは直接的な飲食店への経済効果は大きくなかったと思います。オンライン予約サイトによるGoTo Eatキャンペーンの仕組みが、ほぼ国民の自己負担なしで参加できるものである以上、予算額の616億円を超えた飲食店への影響はさほど大きくはありません。
また今回終了したキャンペーンは、オンライン予約サイトに出店料や客送料を払っている飲食店しか予約拡大の恩恵は受けられず、飲食店への支援という意味では効果は限定的で、飲食店にとって平等でもなかったと思います。
しかし、政府が現在行っているGoToキャンペーンの表向きの目的は観光業や飲食業への支援ですが、私は、その目的の裏に「旅行に行ってもいい」「外食してもいい」という空気感を作り出してして、自粛モードを解禁して経済をコロナ前に戻すねらいがあるのではないかと考えています。
4月からの緊急事態宣言を受けて自粛モードに入っていた私たちは、5月末から6月にかけて陽性者数が落ち着いてきた後も、なかなか旅行などのお出かけに一歩踏み出せずにいました。もちろん、新型コロナウイルス感染症の影響で仕事が減ったり失業したりして旅行どころではない人もいたでしょうが、そうでない人でも、「じゃあ旅行でも行こうか」という雰囲気にはなかなかなりませんでした。
そんなときに始まったGoToトラベルキャンペーン。キャンペーン内容を見たら、旅行代金が35%オフになり通常の旅行よりかなりお得に旅行に行ける内容でした。「旅行してもいいなら、この機会に行ってみようか」という人が増え、ふたを開けてみると7月からお盆期間までのGoToトラベル利用者はのべ400万人にもなりました。
キャンペーンの実施により「旅行に行ってもまあ大丈夫」という空気感の醸成には成功しました。
今回の飲食業への支援についても、今まで外食を自粛していた人が「国がいいと言っているなら、外食してみようかな」となったのであれば、それは飲食業への支援としては成功なのだと思います。
旅行も飲食もイベントも、「まず出かけてみる」という第一歩がなければ、どれほど政府が補助金などで支援しても、旅館やお店の経営はしばらくするとじり貧になります。
キャンペーンが呼び水となり、これまで自粛モードで動いていなかった人が少しでも動き出せば、まだ経営上のチャンスは残ります。
Go To Eatキャンペーン 次にやるならどうする?
キャンペーン終了と時を同じくして新型コロナウイルスの陽性者が増加傾向となり、国としても感染防止に向けた舵取り必要になってきた現状では、オンライン予約サイトを利用したGo To Eatキャンペーンについて予算を増やして継続することはないでしょう。
でも、もし次新たに立ち上げるとしたら、どんな方法が良いのか想像してみました。
ポイント利用時のポイント還元は止める
まずポイント利用にポイント還元するのは止めます。これをするだけで、ポイントと同額(以上)の利用者の自己負担が発生するので、国の予算の2倍は飲食店で使われることになります。
つまり、1,000円の外食で1,000円のポイントがつく、これは今回のキャンペーンと同じです。次1,000円の外食をして1,000円分をポイントで支払ったら、この回はポイント還元はなしです。こうすると、利用者は1,000円の負担で2,000円の外食ができる、つまり半額で外食ができることになり(半額は自己負担)、飲食店側もポイント獲得時とポイント利用時で倍のお客さんが見込めます。
月ごとの予算と一人あたりの利用回数を制限する
キャンペーン期間をできるだけ長くするため、一人につき月2回などポイント還元の上限を決めます。また予算も月割りにして、その月の予算が無くなれその月は終了し、また来月に実施する形にして、短期間にキャンペーン利用者が殺到してお店にお客さんが密集するのを防ぎます。
もし一人月2回の利用に制限しても、ポイント獲得のために2回外食し、そのポイントを利用するために2回外食すれば、外食回数としてはそこそこです。
利用者を絞る
キャンペーンの利用は、家族かおひとり様に絞ります。
友人や同僚との会食は全額自己負担で行きましょう。友人や同僚と外食したい人はキャンペーンがなくても外食しますから、対象から外します。これでクラスターを防ぎます。家族内感染は外食しなくても家の中でも発生するため、防ぐのは難しいのであきらめます。
これでキャンペーンと感染症対策を両立します。
細く長く、密にならない形で実施することが飲食店にとっても重要ではないかと思います。
なお、GoTo キャンペーンの目的は、観光業や飲食業(今後はイベント業や商店街)を支援することであり、国民の旅行や外食の費用を軽減することではありません。
GoToトラベルやGoTo Eatは、旅行や会食を勤め先から禁じられている人は使えないし、 GoTo Eatはネットを使えないと参加できないから不公平だ、みんなに平等になるよう〇〇券やお金を配るべきだという意見がありますが、「平等に使えないと不公平だからお金や外食券を配って!」という主張は、今回のキャンペーンの目的である観光業や飲食業の支援から考えると的外れです。国民の外食費を補助するための制度(国民への支援)ではなく、あくまで飲食店への支援を目的にしたキャンペーンです。(もちろん、その政策(観光業や飲食店の支援)はすべきではなかったとか、支援は補助金でするべきだったという主張はありです。)
これからの飲食業
今回のGo To Eatキャンペーンを契機に初めてオンライン予約サイトに登録した個人の飲食店も多いと思います。
私も今回のキャンペーンで、オンライン予約がとても便利なことを知りました。
今までは電話で予約することが多かったので、「電話をする時間」というのがどうしても必要で、共働きのわが家ではなかなか電話のチャンスがなく、地味にストレスでした。予約せずにお店に行く場合は、待ち時間を気にする必要があり、特に子連れだと子どもが待てない時もあるので、すごく早めにお店に行ったりしていました。
この点オンライン予約は、電車の中でも予約が可能なので予約が容易ですし、来店後の待ち時間もないので子連れでも安心です。わが家は今後もオンライン予約を使っていくと思います。
お店側についても、オンラインでの予約が主流になれば、予約の電話を受けるために必要だった人件費が不要になるかもしれません。
また、予約して来店することが主流になれば、予約の入っていない日はそもそもお店を開けずにお休みにすることも可能です。実際に先日お伺いしたお店は、毎年、年末年始は予約がなければお休みするとおっしゃっていました。
予約来店が当たり前になれば、その日必要な食材の量も事前に把握できるため、廃棄食材も減ります。そうすれば廃棄食材のコストを提供する食材の質や量に還元でき、お店の料理の質や量も上がるかもしれません。
高齢者が主流のお店ではなかなか難しいですが、客層が若めで、オンライン予約サイトくらい利用できるお客さんを対象にしたこじんまりしたお店なら、Go To Eatキャンペーンでオンライン予約を取り入れたことを機会に、様々な工夫が可能になります。
新型コロナウイルスで、私たちは、社会が大きく変わる潮目に立っています。
せっかく税金を使ってキャンペーンを行ったわけですから、今回のGo To Eatキャンペーンが、飲食店にとって「手間ばかり増えたのに他店に予約を取られて全然効果がなかった」という感想だけに終わらず、今後のプラスに進む転換点になればいいなと思います。
(合わせて読みたい)
www.workingmother-rikumiler.com
www.workingmother-rikumiler.com
www.workingmother-rikumiler.com
www.workingmother-rikumiler.com
www.workingmother-rikumiler.com
お役に立てましたら、ポチっとお願いします。ブログ村に遷移します