先日、私の考える少子化の原因と対策を記載しました。
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その中で、少子化の原因の1つに教育費負担の増加があると書いていますが、子育て費用への支援については、ここ数年で、色々と充実してきています。
今回は、「収入が不安で妊活できない」「妊娠したけれど、経済的にやっていけるか不安だ」という方の参考になるよう、子育て世帯が受けられる金銭的な支援をまとめてみました。
児童手当
内容
子どもを養育している人にもらえる手当です。
もらえる金額
3歳未満 月15,000円
3歳以上小学校終了まで
第1子・第2子 月10,000円、 第3子以降 月15,000円
中学生 月10,000円
総額で200万円程度になります。中学校卒業と同時に手当がなくなるので、4月生まれが得で、3月生まれが損になります。
所得制限
共働きでも、所得の高い方のみで判断し、子ども1人の場合は875.6万円、子ども2人だと917.8万円、子ども3人だと960万円以下が対象。(金額は給与(総支給額)ベースです。)
共働き世帯もけっこう満額もらえることがことが多い手当です。
乳幼児医療費助成
内容
子どもの医療費の自己負担(通常は小学校入学までは2割、それ以降は3割)を一部助成する制度です。1回の通院あたり〇円で済むよう、健康保険の自己負担分(通常2割や3割)の残りの部分を助成してもらえます。
助成を受けた後の医療費の自己負担は、0円のところから、1通院につき500円(薬代含む)のところもあるなど、自治体(市区町村)によりかなり異なります。
助成が受けられる期間も、3歳までのところから18歳までのところまで様々です。
もらえる金額
治療方法や薬にもよりますが、子どもが熱を出して通院すると、助成がなければ1回の通院につき健康保険適用で2割負担で2,000円程度の自己負担が生じます。(治療内容によりますが)
これを1回〇円で済むように助成してもらえますので、18歳まで月1回病院に通院する場合、18年間で40万円ほどの医療費がかかるはずのところ、1通院につき自己負担が500円の自治体に住んでいれば自己負担は10万円程度ですむため、30万円程度の助成を受けられることになります。自己負担0円の自治体だと40万円程度の助成になります。
所得制限
自治体(市町村)によりかなり異なります。
東京都は23区内だと所得制限はありませんが、例えば兵庫県内のいくつかの市町村では、0歳であれば所得制限なしになるものの、1歳以降は所得制限があり、サラリーマン共働き世帯の場合は、所得の高い方を基準として、おおむね600万円程度(収入ベース)が所得制限の対象となります。
所得制限についても、所得の高い方だけで見てもらえる自治体もあれば、世帯(共働きの場合は夫婦2人分)で判断される自治体もあり、バラバラです。
幼児教育の無償化
内容
3歳から5歳までの幼児教育に対し、認可保育園や認定こども園については料金の全額を無償化、幼稚園については月額27,500円を上限に授業料を補助してもらえる制度です。
0歳から2歳までの認可保育園や認定こども園の保育料について、非課税世帯については第1子から無償化、無認可については月額4.2万円を上限に補助されます。なお第2子は半額、第3子は無償になるよう補助もあります。
所得制限
3歳から5歳の無償化については、所得制限はありません。全員が対象です。
0歳から2歳の第1子と第2子の無償化については、住民税非課税世帯のみが対象で、共働き世帯の場合、夫の年収が255万、妻の年収が100万円以内くらいであれば非課税世帯に該当します。(保育園に入園できるのは、基本的に夫婦とも働いている必要があります。)
0歳から2歳の第2子の半額や第3子の無償化については、所得制限はありません。(※)
※もともと、保育園に複数の子どもが在籍する場合、第2子、第3子は、所得に応じて必要は保育料が、半額になったり無償になる制度があり、その影響です。
もらえる金額
(保育園の場合)
3歳から5歳の保育料は、世帯年収や自治体により異なりますが、夫500万円、妻400万円、子ども1人の共働き世帯の場合、国が定める保育料の基準では3歳から5歳では58,000円なので、58,000円×36か月=208万8千円が無料になります。
(幼稚園の場合)
27,500円×36か月=99万円が助成されます。
ただし、無償化される前から、幼稚園就園奨励費という名前で、世帯所得に応じて助成される制度があり、年収360万円未満の専業主婦世帯では年額187,200円(3年間で56万1,600円)、年収680万円未満の専業主婦世帯では年額62,200円(3年間で18万6,600円)がもらえていました。
(保育園に通う非課税世帯の場合)
住民税非課税世帯は、国が定める保育料が0歳から2歳では月9,000円、3歳から5歳は6,000円ですから、9,000円×36か月=31万5千円と6,000円×36か月=21万6千円、合計で53万1千円が無料になります。
高等学校就学支援金
内容
高等学校等に通う生徒に対して、 授業料に充てるため支給されるお金です。
もらえる金額
国公立高等学校の生徒で月9,900円、3年間で35万6,400円です。
私立高等学校の生徒で、月9,900円か月33,000円、3年間で35万6,400円か118万8千円です。
所得制限
(国公立高等学校の生徒の場合)
課税標準額の調整額×6%-市町村民税の調整控除の額が304,200円未満
共働き世帯で子ども2人(高校生と中学生)の場合、夫婦合算の年収が1,030万円程度くらいまでです。
(私立高校の生徒の場合)
・3年間で118万8千円(満額)の補助を受ける場合
課税標準額の調整額×6%-市町村民税の調整控除の額が15万4500円未満
共働き世帯で子ども2人(高校生と中学生)の場合、夫婦合算の年収が660万円程度くらいまでです。
・3年間で35万6400円の補助を受ける場合
課税標準額の調整額×6%-市町村民税の調整控除の額が304,200円未満
共働き世帯で子ども2人(高校生と中学生)の場合、夫婦合算の年収が1,030万円程度くらいまでです。
※所得制限は、毎年判断されますので、1年生の時はOKだったけれど3年生の時は親の収入が上がって対象外になるということがあります。
高校奨学のための給付金
内容
高校に通う生徒の授業料以外の教育費(※)負担を軽減するため、高校生等がいる低所得世帯を対象に支援する制度です。
もらえる金額
国公立高校に通う生徒 年3万2,300円から月12万9,700円、3年間で9万6,900円から最大38万9,100円です。
私立高校に通う生徒 年5万2,600円から月13万8000円、3年間で15万7,800円から最大41万4,000円です。
所得制限
生活保護世帯もしくは非課税世帯
高校生のいる非課税世帯の年収は、共働き世帯の場合、夫の年収が300万円、妻の年収が100万円未満くらいであれば非課税世帯に該当します。
大学無償化
内容
大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の進学のための授業料減免の支援が受けられる制度です。
もらえる金額
生活保護・非課税世帯の場合
入学金の減免 7万円から26万円
授業料の減免 年額17万円から70万円、4年間で68万円から280万円
※大学・短大・専門学校の種類や、国公立・私立の別で金額が変わります。
※世帯年収が380万円程度の世帯ではこの1/3の支援になります。
所得制限
住民税非課税世帯及びこれに準ずる世帯
大学生の子どもがいる家庭であれば、世帯の収入が子ども2人でおよそ380万円くらいまでの世帯です。
大学等の給付型奨学金(生活費)
内容
大学、短期大学、高等専門学校、専門学校の進学のための給付型奨学金(生活費)の支援が受けられる制度です。
もらえる金額
年額32万円から80万円、4年間で128万円から320万円
※自宅通学か自宅外からの通学かで金額が変わります。
※世帯年収が380万円程度の世帯ではこの1/3の支援です。
所得制限
住民税非課税世帯及びこれに準ずる世帯
大学生の子どもがいる家庭であれば、世帯の収入が子ども2人でおよそ380万円くらいまでの世帯です。
もらえる金額のまとめ
22歳(大学卒業)まで子どもを育てる場合にもらえる金額を一覧にしてみました。
(単位:万円)
もらえる手当等 |
所得判断の対象 |
非課税 |
380万円 |
590万円 |
900万円 |
900万円以上 |
|
児童手当 |
世帯主のみ |
200 |
200 |
200 |
200 |
90 200※1 |
90 200※1 |
乳幼児医療費 |
世帯主のみ |
40 |
30 |
30 |
30 |
0 30※1 |
0 30※1 |
保育園無償化 |
世帯合算 |
0(前から無償) |
53 |
80 |
208 |
208 |
208 |
幼稚園無償化 |
世帯合算 |
99 |
99 |
99 |
99 |
99 |
99 |
公立高校無償化 |
世帯合算 |
35 |
35 |
35 |
35 |
35 |
0 |
私立高校無償化 |
世帯合算 |
118 |
118 |
118 |
118 |
35 |
0 |
高校奨学給付 |
世帯合算 |
15 |
38 |
0 |
0 |
0 |
0 |
大学無償化 |
世帯合算 |
306 |
306 |
102 |
0 |
0 |
0 |
大学給付型奨学金 |
世帯合算
|
320 |
320 |
107 |
0 |
0 |
0 |
※1 共働きで、年収の高い方の所得だけ見ると所得制限以下の場合にもらえる金額
保育園6年間→公立高校→私立大学の進学の場合
保育園に通い、公立高校、私立大学に進学した場合にもらえる金額の合計です。
(単位:万円)
所得制限 |
非課税 |
380万円 |
590万円 |
900万円 |
900万円以上 |
|
合計
|
916 |
982 |
554 |
473 |
333 (438) |
298 (438) |
()は、共働きで年収の高い方の所得だけを見ると所得制限以下の場合にもらえる金額
幼稚園3年間→公立高校→私立大学の進学の場合
幼稚園に通い、公立高校、私立大学に進学した場合にもらえる金額の合計です。
(単位:万円)
所得制限 |
非課税 |
380万円 |
590万円 |
900万円 |
900万円以上 |
|
合計 |
1015 |
1028 |
573 |
364 |
224 |
189 |
保育園6年間→私立高校→私立大学の進学の場合
保育園に通い、私立高校、私立大学に進学した場合にもらえる金額の合計です。
(単位:万円)
制限 |
非課税 |
380万円 |
590万円 |
900万円 |
900万円以上 |
|
合計 |
989 |
1065 |
634 |
556 |
333 (473) |
298 (438) |
()は、共働きで年収の高い方の所得だけを見ると所得制限以下の場合にもらえる金額
幼稚園3年間→私立高校→私立大学の進学の場合
幼稚園に通い、私立高校、私立大学に進学した場合にもらえる金額の合計です。
(単位:万円)
所得計算の対象 |
非課税 |
380万円 |
590万円 |
900万円 |
900万円以上 |
|
合計 |
1098 |
1111 |
656 |
447 |
224 |
189 |
注1 ざっくりした計算です。
注2 大学給付金については自宅通学と下宿で金額が異なります。(下宿で算出しています)
一覧を見て分かること
一覧表の合計を見ると、例えばフルタイム共働き、夫500万円・妻450万円の給料をもらって、世帯収入の合計が950万円程度の世帯の場合、児童手当と保育料無償化分と医療費の支援を受けられれば、最大で438万円の支援が受けられることになります。
この438万円を貯金や運用に回しておけば、大学の授業料くらいは賄えます。
共働き世帯にとっては、所得制限が、所得の多い一人だけで見てもらえるのか、世帯合算で見られるのかで、所得制限にかかるかかからないかが大きく異なり、受けられる支援が異なってきます。
個人的には、社会で共働き(女性活躍推進)をすすめているわけですから、所得制限は世帯で判断すべきだと思いますし、「共働きを始めたら結果的に不利になる」ような、現在の制度、特に高校無償化制度は見直すべきだと思います。
上の合計を見ると、最も支援を受けられるのは非課税世帯です。(生活保護世帯はそもそも生活保護費の支給があるので他と比べられません)
社会保障は富の再分配の仕組みですから、所得が低い人により多くの支援があるのは当然です。
1人の子どもを育てるのに必要な教育費は、幼稚園から大学まで全て公立だと1,000万円程度、幼稚園と大学が私立だと1,700万円程度と言われています。
非課税世帯の場合、上の合計欄の幼稚園→公立高校→私立大学の進学の金額をみると、1,028万円がもらえる計算です。必要な教育費の6割程度は上で説明した行政からの支援だけで賄えます。
また、非課税世帯であれば、上記の支援以外にも、給食費などを支援する就学援助や、様々な減免、私立中学校でも多少は授業料減免をしてもらえる、ひとり親家庭であれば児童扶養手当をもらえるなど、多くの支援があります。
現在、収入が低くて非課税世帯に該当し、結婚や出産を悩んでいる方は、それほど教育費の心配をしなくてもよさそうです。
最後に
とにかく、子育てにはお金がかかります。
ただ、最近はそれなりに支援が充実してきており、非課税世帯や世帯収入が380万円未満の世帯には、昔よりたくさんの支援があります。
所得が低く、お金が不安で子どもを生むことを悩んでいる場合は、このような支援されるお金も調べてみてください。
ただし支援が必要な場合は、きちんと情報を集めて自分から取りに行くことが必要です。
行政からもらえるお金は、手続きをしなければもらえませんし、行政側から積極的に教えてくれることもありません(税金がかかるため)。
情報は自分で取りに行く。これが一番大切だと思います。
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