わが家の最寄り駅の踏切は、いわゆる開かずの踏切で、距離も長いです。
徒歩の場合、渡り切るにも10秒以上かかり、その間に警報機が鳴り始めることも多いです。
先日の踏切での出来事
先日、最寄り駅の踏切を渡っていたときのことです。
踏切待ちをしていた私は、踏切がひらいてすぐに先頭を歩き切って始めましたが、踏切の途中くらいで警報音が鳴り始めました。
信号待ちの時点で、私の後ろには何人かの人や自転車が待っており、自転車は私を抜いて先に踏切を渡り切っていますが、徒歩の人は私の後ろを歩いている状況です。
警報音が鳴り始め、小走りで進みましたが、渡り切る手前で遮断機が下りてきていました。
私は遮断機が最後まで下りる寸前で渡り切りました。私の後ろを歩いていた人たちも、走って踏切を渡ろうとしていました。
そのとき、後ろで「バン」と音がしました。見ると、50代前後の女性が、踏切内で転倒しています。
振り返ったときには、遮断機は片方がすでに下がってしまっています。女性は踏切内で転んだままです。遮断機から5メートルくらい離れたところで転倒しており、手を伸ばしたり、身体を少し遮断機内に入れて届く距離ではありません。
そのうち、もう片方の遮断機も下がりきってしまいました。
その時、遮断機のそばで転倒した女性を見ていたのは、私と、徒歩で踏切を渡り終えた60代くらいの女性の2人でした。2人のうち若いのは私です。他の人はすでに歩いて行ってしまっており戻ってくる気配はなく、遮断機で停車している車は近くにいますが、誰か出てくる気配はありません。
その時私が考えたこと、感じたこと
その時、私が考えたことや感じたことは、
・あの人は一人で立てるだろうか
・助けに行かず、一人で立てなかった場合、私は人身事故をこの目で見てしまうのだろうか
・助けに行く時間があるだろうか
・私一人だけであの人を助け出せる状態だろうか(ケガなどしていないだろうか)
・一人で助け出せない場合、隣の女性は一緒に手伝ってくれるだろうか
・助けに行けば私も電車にはねられるかもしれない、怖い
・でも、目の前で人身事故を見るのも、とても怖い
・あとどのくらいで電車が来るのだろうか
ということでした。
これを考えたのが2秒ほどでしょうか。
考えながら私は、「立ち上がってー」「頑張って」と声を出しました。
隣にいた女性も、「頑張れー」「急いで―」と声をかけていました。
時間はどんどん過ぎていきます。
その後、転倒した女性は何とか一人で立ち上がりました。
「ゆっくりでいいから歩いて!」「荷物はいいから歩いて!」「頑張って」と私。
「気をつけて」「急いで」と隣の女性。
結局、転倒した女性は、自分で荷物を拾って、「痛い」と言いながらも歩いて遮断機まで来て、私の隣にいた女性が遮断機を手で上げて、踏切から出しました。
その後、電車が通りました。
「大丈夫ですか?」「大丈夫です」「よかった!」というやり取りの後、何事もなかったように、3人がそれぞれ目的の場所に歩き始めて、ふと気が付きました。
安心したあとに気づいて、ショックを受けたこと
お気づきの方はいらっしゃるでしょうか。
私はあのとき、「踏切の非常ボタンを押す」という動作を、一瞬も考えつきませんでした。
本来、踏切で誰かが倒れたときにまずすることは、状況を素早く確認した上で、非常ボタンを押すことです。
(JR西日本ホームページより)
非常ボタンを押すと、電車の運転士に危険を知らせることができます。
警報が鳴り始めて30秒ほどで、電車が踏切まで来てしまうので、非常ボタンはなるべくためらわずに早い段階で押すことが重要です。
考えてみると私は、自宅近くの一番よく使う踏切の、非常ボタンの場所を知りませんでした。
ただ、知っていたところで、踏切内で女性が転んだまさにそのとき、「非常ボタンを押して電車を止めないと」と考えることは、おそらくできませんでした。非常ボタンを探すことさえしませんでしたから。
私は昔、勤務先でBCPの作成に携わったことがあります。危機管理という点では、周りの人より、少しは考えているつもりでした。
それでも、転んだ女性を助けようという気持ちはあるのに、思いついた方法は、自分が入っていって助かるか、ハラハラしながら応援して見守るかの2択でした。
まず最初の(そしてもしかしたら唯一の)選択である「非常ボタンをおして運転士に危険を知らせる」に思い至らなかったことが、とてもショックでした。
踏切内で取り残されることは、よくあることです。よく通る踏切は、開かずの踏切なので、歩いている途中で警報が鳴り始め、遮断機が下りてしまい、潜り抜けて踏切から出てくる人はよく見ていました。
それなのに、非常ボタンの場所を確認することはなかったです。
試合で、練習以上のものが出せないのと同じで、危機管理の事象が起こったときにとっさにできる動きは、日ごろから準備していることだけです。
私は日ごろから、踏切で何か起こったときは非常ボタンを押すという準備をしていませんでした。
あの出来事のあと、踏切の非常ボタンと、駅の非常ボタンを確認しました。
家の周りにある危険な場所では、「もし子どもがこういう動きをしたら、自分はどう動くか」というシミュレーションを少しづつするようになりました。
危機管理には、日ごろの備えがとても大切だと、身に染みて感じた出来事でした。
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