わたしの職場には、昼休みに、保険の勧誘のお姉さん(いや、私より大幅に若い、かわいらしい保険外交員さん)が来られます。みなさん、一生懸命、名前や生年月日を質問したり、現在加入している保険を聞き出そうと、頑張っています。
しかし私は、ほとんど目もあわせず、かなり冷たい、つれない対応をしています(外交員さん、すみません)。
今日は、そのつれない対応の理由ととともに、ワーキングマザーの投資や保険について、考えてみます。
- 保険で得をするのは誰?
- 学資保険を考える
- 返戻率が低いとはどういうことか
- 夫婦共働きのため、死亡保障のメリットがあまりない、の説明
- 保険による学費の貯蓄が、本当にお得なのか、考察する
- 投資のリスク
- わが家の場合
- まとめ 保険と共働き
保険で得をするのは誰?
これは、確実に答えが出ています。保険の会社です。利益が出なければ、会社として成立しません。
保険会社は、株式会社ではなく相互会社という仕組みで成り立っており、もうけ云々は、いわゆる株式会社とは違う、などと説明されることもありますが、基本的には、立派な社屋を建て、従業員の給料を確保し、CMその他広告で保険のPRを行っており、その資金は、保険加入者から受け取っている掛け金ですから、立派に儲かっています。
加入者に利益がなければ誰も保険になんて加入しないよ、それはその通りです。
では加入者の「利益」とは何でしょうか?
昔は、満期になれば、掛け金より多い額の保険の支払いがあるような、いわゆる返戻率の高い、お得な保険がたくさんありました。こういった保険は、掛け金よりはみ出した額は「利益」だったと思います。そして、掛け金をかけている期間に受けていた、もしもの時の「安心」これも利益だったしょう。
しかし、現在は、掛け金より払戻金が多いような保険は、少なくなっています。では現在の保険の利益は何でしょうか。「安心」のみです。安心にお金を払っているのです。
私がつれない対応をするのは、すでに必要な保険には加入しており(これも再考の余地や後悔がありますので、機会があれば記事にします)、変更する予定はないことと、安心は、保険以外でも担保できる、むしろ保険よりほかの方法のほうが「安心」の価値が高くなると考えているからです。
わたしに営業努力を向けるのは、この方の時間の無駄になると思うので、自分でも冷たいなと思いながら、そっけなく対応しています。
学資保険を考える
子どもができた、というとき、まず考えるのが、子どもの学資保険だと思います。私も検討しました。
学資保険とは、こどもが学校に進学するタイミングで、満期を迎える、保険金が支払われる保険です。高校に入る15歳、大学に入る18歳など、満期のタイミングは何パターンかの中から選べます。
加入者は親になりますが、契約者(親)が死亡した場合、その後の掛け金は免除されるという死亡保障がついているものが多いです。
また、加入期間にかかる子どもの医療保険や損害補償などがついているものもあります。
こどもが産まれる前や生まれてすぐは、なんだかいろいろ保障されていて、よさそうだな、と思うような魅力的な内容です。
しかし、結論ですが、わが家は、学資保険に加入していません。
加入しなかった理由は、
(1)返戻率(払込保険料と受取保険料の比率)が低い
(2)夫婦共働きのため、死亡保障のメリットがあまりない
主にこの2点です。
返戻率が低いとはどういうことか
返戻率とは、払込保険料と受取保険料の比率です。100%を超えると、保険料として払った額より、受け取った保険額のほうが高い、となります。返戻率100パーセントを越えていればお得なのでは、とも思うのですが、ここで、学資保険で人気が高いソニー生命を例にとり検討します。
ソニー生命の学資保険の一番人気のものは、出産前に保険に加入し、出産直後から保険料を支払うと、大学進学時の18歳のときに、払込総額1,961,280円で、200万円の保険金を受け取ることができます。返戻率は、約102%です。38,720円がお得になります。(2019年12月現在)
この保険は、貯蓄重視型であり、子どもの医療保険などはついていません。親の死亡保障はついています。
この保険のメリットは、ソニー生命もうたっているように、貯蓄性ですね。毎月9,080円を貯蓄し、18歳時に200万円受け取るわかりやすい保険です。
なお、このソニー生命の保険は、子どもが10歳までに保険料を払い込めば、返戻率は、107%に跳ね上がります。1,908,000円の払い込みで200万円が受け取れます。月々の払い込みは15,900円で、92,000円お得です。これならよさそうな気もしますね。
なお、学資保険については、子どもの医療保険などを付帯させると、返戻率はほぼ100%を下回ります。
夫婦共働きのため、死亡保障のメリットがあまりない、の説明
学資保険の重要なメリットとして、保険会社から、死亡保障をまず紹介されることが多いと思います。死亡保障とは、契約者(例えば子どもの父)が亡くなった場合、死亡後は、保険料の支払いは不要になるが、払戻時期には、満額の200万円が返ってくる、というものです。上記のソニー生命の学資保険も、死亡保障がついています。
共働き、特に正社員フルタイムの共働きの場合、夫婦の給料の合計で、生活をしている場合が多いと思います。子どもの学費や保険も、夫婦の収入の合計から考えて、月々に支払うことができる額を算定していくでしょう。
仮に、子どもの父親を契約者とした学資保険に加入した場合、子どもの母親である私が死亡しても、保険料は免除になりません。
夫婦合算の収入で生活費を計算し、月々に支払える保険料を算定していたのに、片方の母の収入が途絶えてしまったら、月々の保険料の支払いが重荷になる可能性があります。母親を契約者とした場合でも同様のことが起こります。
保険によっては、父親と母親で、それぞれ保険に加入する(いわゆる満期で払い戻しを受けたい額の半額をそれぞれが加入する)方法もありますが、保険金額が減ると、返戻率も下がるうえ、どちらかが亡くなっても、半額の保険料の払い込みは残るため、あまりお得とはいえません。
ただ、この死亡保障の問題は、夫婦の収入がほぼ同じくらいである、わが家だからこそ生じた問題かもしれません。夫(もしくは妻)の方が、大幅に収入が多い家庭については、死亡保障は効果的かもしれません。
保険による学費の貯蓄が、本当にお得なのか、考察する
ここで、保険による貯蓄が本当にお得なのか、ソニー生命の保険を例に検討します。保険以外に学費をためる手段として、貯金と、国債と、積み立てNISAを考えます。
貯金する
ソニー生命の、10年払い込み型200万円の契約の場合に、月々に払い込む15,900円を、毎月貯金すると、1年で190,800円、10年で1,908,000円が貯まります。これを、日本全国どこにでもありそうな、ゆうちょの定額貯金に貯金することにします。
貯金をすると、利息が発生します。利息の計算方法は、単利と複利の2種類があります。
単利とは、利息を元本には組み入れず、元本部分に対してのみ利息がつくものです。元本部分は預けた当初の金額から増えることはありません。
一方、複利とは、預金から得られた利息を元本に組み入れて、利息がつくことです。こうすることで利息が出るたびに元本が増えていきます。
ここで、貯金することによる利息を計算してみます。
ゆうちょの定期預金は、半年複利で利息がつきますが、計算がややこしいので、1年に190,800円貯金し、1年複利で計算することにします。
ゆうちょの定期預金は、1年金利が、0.01%です。複利0.01%で10年間、毎月貯金すると、利息込みで合計1,909,500円になります。そして、この1,909,500円を複利0.01%で18歳まで預金を続けると、1,910,960円になります。元本より、2,960円増えました。
これだと、学資保険のほうがお得です。
と言いたいところですが、ここでまた一度立ち止まります。
本当に学資保険のほうがお得でしょうか。
保険のリスクとしては、保険会社の倒産があります。保険会社が破綻した場合、保険の払戻が0になることはないですが、8割ぐらいに支払額が減らされることがあります。
ゆうちょを含め銀行も破綻の危険がありますが、こちらについては、国が1,000万円(+利息)までは保障することになっています。ペイオフと呼ばれます。
破産のリスクは貯金のほうが少ないです。また、保険は、満期の支払いの際に、支払額と払込額の差額が50万円を超えた場合は税金がかかります。貯金は、毎年の利息にのみ税金がかかります。
まあ、大手保険会社の場合、倒産するリスクはほとんど考えなくてもよいですし、現在、返戻率が高い保険があまりないので、貯金と保険については、最終的には保険がお得、ということにします。
国債を買ってみる
では、次に、国債を買ってみます。国債とは、国の債権です。国にお金を貸していることと同じです。
お金を貸すと、利息が発生しますね。国は現在、0.05%の利息を付けることを約束しています。この利息は固定のものと変動のものがありますが、ざっくり0.05%金利の10年国債を100万円買うとすると、10年後、100万5000円になって返還されます(実際は、金利は毎年支払われ、元本が10年後に支払われる)。
国債は国の借金ですから、国の補償があり元本は減りません。国が破綻すれば、元本保証はなくなるでしょうが、国が破綻すれば、民間会社の学資保険が維持されるのかも怪しいので、ここは考えないことにします。
例えば、子どもが8歳のときに100万円、10歳の時にさらに100万円の国債を買うとすると、18歳で100万5000円、20歳で100万5000円、合計201万円が返ってくることになります。1万円増えました。しかし、まだ保険のほうがお得ですね。
ただし、国債の場合は、変動利息を選択すると、景気に応じて利息が増える可能性があります。変動利息でも、0.05%の利息は保障されますので、1万円の利息を確保した上で、投資の意味合いも込めて国債を買う選択肢は、ありかもしれません。
なお国債の利息については、税金がかかります。
つみたてNISAを考える
最後に、つみたてNISAを考えてみます。
「つみたてNISA(積立NISA)」とは、年間40万円までの投資額にかかる運用益が非課税となる制度です。投資から得られた利益に対して、通常20.315%の税金(所得税+住民税+復興特別所得税)がかかりますが、これがNISAの場合、ゼロになります。
仮に毎月15,900円をつみたてNISAで運用すると、190,800円を毎年投資することになります。40万円以内なので条件をみたしています。
これを、2019年の投資信託の積み立て利回りの平均利回りである、4.77%で10年間(10歳になるまで)積み立てながら運用すると、2,438,843円になります。そして、そのまま18歳まで4.77%で運用し続けると、3,886,452円になります。
(金融庁資産運用シミュレーションhttps://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/moneyplan_sim/index.html)
学資保険より、かなりお得になりました。しかも、元本から増えた約188万円については、非課税です。
投資のリスク
投資ですから、リスクはあります。解約の時期によっては、元本を下回ることもあります。リスク、怖いですね。
しかし、投資リスクのリスクヘッジについては、本やネットなど様々な媒体が、様々なやり方を紹介しているほか、ローリスクローリターンの投資信託などもたくさんありますので、やってみる価値はあります。
なお、投資を始める際は、必ず少しは勉強しましょう。勉強方法は、本でもネットでも、近くにいる詳しい人に聞くでも、なんでもかまいません。
学資保険の貯蓄性の代替という視点では、ジュニアNISAであれば、子ども名義の口座で運用し、18歳までは払い出しができませんので、「お金はあれば使ってしまう」というタイプの方にもおすすめです。
今まで、貯金しかしたことがない、投資なんてやったことがなくて、怖い、と思われる方。よくわかります。食わず嫌いで、やってみたら、あっさりできる、という場合もあるでしょうし、実は自分には合わない、という場合も、あると思います。
よくCMで流れているDMM.comが運営している証券会社は、手数料が安く、ネットで自分で口座開設や購入ができるので、NISAや株式購入のとっかかりとしては、お手軽かと思います。
なお、最初は、信用取引(現金で振り込んだ額の〇倍まで取引ができますよ、というもの)ではなく、現物取引をお勧めします。信用取引だと、想像以上に、価格の上がり下がりの影響を受けますので、経済や株の仕組みが分かった後、やる気があれば、挑戦してみてください。
また、SBIネオモバイル証券は、日本で初めて、Tポイントで少額投資ができる会社です。現実のお金を動かすのは怖くても、ポイントであれば、少し、気持ちが楽に始められるかもしれません。こういうものを活用して、一度やってみる、というのもありだと思います。
なお、Tポイントは、ポイントサイトを利用すると、たくさん貯めることができます。ポイントサイトの説明は、こちら。
www.workingmother-rikumiler.com
わが家の場合
(1)返戻率の低さに対応するために
わが家の場合、フルタイム共働きということもあり、年100万円以上の貯蓄ができています。また、夫も私も、お金はあれば使う、というタイプではないので、今のところ、先取り貯金が必要というわけでもありません。
したがって、貯蓄タイプの保険に加入するよりは、資産の流動性を高めて少しでも運用できるように、ということで、投資を選びました。
子どものジュニアNISA口座を開設し、毎年約20万円を運用しています。運用益はそこそこでよいので、リスクの低いものを中心に積み立てています。
ジュニアNISAは、18歳まで解約できないというデメリットがあるので、資産の流動性を確保するなら、ジュニアNISAでないほうが良いという考え方もあるのですが、ここは貯蓄の部分と割り切って、忙しい中でも対応できる範囲ということで、この方法に落ち着きました。
(2)夫婦共働きでは死亡保障があまり機能しないことに対応するために
ジュニアNISAを選択したため、仮に夫婦のうちどちらかが死亡した場合は、つみたて額を減らす、もしくは収支が安定するまでは投資をいったん止める、という方法で対応する予定です。
夫婦とも、退職金や年金がある程度見込める会社に勤務しているため、仮に片方が死亡した後、子どもが18歳のときに一時的に必要になる学費は、死亡時の退職金などで賄うことが出来そうです。
あとは、生きている間にそれなりに貯蓄をしておくことで対応する予定です。夫婦とも、元気に働いて長生きするように、毎年人間ドッグに行く、少しでも気になる身体の不調はそのままにしない、などに気を付けています。
(3)子どもの医療保険や損害補償保険に対応するために
子どもの医療保険については、これは子どもが生まれてから実感しましたが、子ども医療費助成制度がある自治体であれば、通常生活するには、医療費はほとんどがかかりません。
入院や手術が必要になった場合でも、月額の医療費は2,000円程度の予定です。
ただ、子どもが入院すると、親の付き添いのための交通費や食費が必要になりますので、これが必要な方は、医療保険の加入も検討されるといいでしょう。
ただし、学資保険に付帯している子どもの医療保険が、十分に自分たちのニーズを満たしているか、また、逆に多すぎる場合はないかなどは、きちんと検討しましょう。
学資保険に付帯する医療保障より、親が加入している医療保険に子ども分も追加するほうが、安い場合もあります。
また、自治体によっては、子ども医療費助成制度に、所得制限がある場合があります。フルタイム共働きの場合、所得制限を超えてしまう場合が多くあります。自治体の制度も詳しく調べましょう。
まとめ 保険と共働き
女性が、出産後も、働き続けられる社会になったのは、法律上は約30年前(1986年男女雇用機会均等法施行)ですが、スーパーウーマンではない、いわゆる「普通の女性」が、出産後も変わらずフルタイムで働き続けられるようになったのは、せいぜい10年ほど前からだと思います。
保険会社が提供している保険は、まだ、父のみが働く専業主婦世帯や、父が主に働き母は補助的にパートなどで働く世帯をターゲットに作られていて、母もフルタイム共働き、収入も同じくらい、という世帯を想定された制度設計には至っていないようです。
ですので、主たる生計維持者(主に夫)に不慮の事故があった場合に効果を発揮する内容のものが多い印象です。
子どもができ、学資保険を検討する際には、保険会社からの説明を鵜呑みにせず、自分たち家族はどのような形で生活をしていくのか、共働きを継続するのか、いったん子育てに専念するのか、現在の保険加入はどうなっているのか、住宅購入のタイミングや生活費の収支のバランスはどうか、など、一度落ち着いて考えてみられることをおすすめします。
落ち着いて考えたうえで、やはり学資保険が自分たちに向いている、という結論になれば、それから加入しても、決して遅くありません。
子どもの学資保険に限らず、共働きのご家庭は、保険会社のターゲットとする各種の保障が、本当に自分たちの働き方や収入に合っているのか、今一度、確認してみることを、お勧めします。
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