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公立小中高校でオンライン授業が進まない理由

 

新型コロナウイルス感染症に伴い、諸外国では学校でのオンライン授業が進み始めています。

しかし、日本のオンライン授業については、公立小中高等学校とその他の学校の間に、かなりの差があるように思います。

 

オンライン授業が進む学校と進まない学校があるのはなぜなのか、その差はどこから生まれるのでしょうか。

 

 

 

学校のネットワークの問題

 

公立学校では、パソコンはイントラネットにしか接続しておらず、外部のネット環境と遮断されているところがほとんどです。

理由は、生徒の個人情報を最大限守るためにその方法がよかった、もしくはその方法しかなかったからです。

 

なお、この、学校内のシステムがインターネット環境がつながっていないこと原因で、メール送信もグーグルクラウドなどでのデータ共有もできないので、先生が自宅で仕事をするのに、USBなど外部端子でクラスの名簿などのデータを持ち出し、それが車上荒らしに盗まれて個人情報流出なんてことが頻繁に起こっています。恐ろしいですね。

  

話がそれました。

 

学校のパソコンが外部のネット環境に接続されていない場合、先生方がオンライン授業をしようとしても、そもそもインターネット環境がないということになります。ですので、「はい今からオンライン授業をやってね。Youtubeにあげればいいからね」と言われても、そのようなインターネット環境はありません。

 

「じゃあパソコンとモバイルルーターを買ってWi-Fi接続すればいいじゃん」と思うところですが、急に言われても、学校にはお金(予算)がありません。

 

 

予算の問題

 

そもそも行政機関では、年度で予算が決まっています。次年度の予算の案を、国なら1月の国会で、都道府県や市町村なら3月の議会に提出し、議会の合意を得て、次年度の予算を決めます。予算案を作る作業は、だいたい前の年の年内つまり12月ごろに終わります。このタイミングで予算の準備をしていないことについては、急に言われても対応できません。

 

令和元年末、コロナがここまで世界的にパンデミックになると予測できた人は、どのくらいいるでしょうか。

少なくともWHOは予測できていませんでした。予算案を作成する都道府県や市町村の教育委員会の人が、もしくは学校の誰かが、「よくわからない感染症武漢ではやっているから、オンライン授業の予算、たくさんとっておこう」なんて予測は絶対無理でした。

 

なお、予算については、国も、通常国会終了後、何度も今回のコロナウイルス関連で補正予算を組んでおり(だから私たちは10万円の給付金が受け取れ、Gotoキャンペーンに参加できています)、学校のオンライン化にも補正予算はついています。でも、実際に公立の小中学校で予算が使えるようになるのは、たぶん早くて秋から冬ごろです。

 

 

公立の小学校や中学校、高校のICT化については、これまでも市町村や都道府県などが予算を組んで行っていると思います。

これまで、お住まいの市町村の予算を見たことがありますか?その中で、学校のICT化にどのくらい予算がついているか気にしていましたか? 

ICT化にたくさん予算つけるように教育委員会や役所に働きかけたことはありますか?税収が減れば予算も減りますので、やりたいことの取捨選択が必要なこともあるでしょうが、教室のクーラーより先に授業のオンライン化に予算をつけてくれと主張できますか?

 

もし、これからも、授業のオンライン化を進めて欲しいと思うなら、役所や議員に「予算を付けて欲しい」と言い続ける必要があります。

 

 

 

授業料の問題

 

ではなぜ、公立ではできなかったオンライン授業が、私立の学校や大学では進められたのでしょうか。

 

 

これは、授業料の問題が大きいと思います。

 

 

私立学校は授業料を徴収します。授業料は月額や年額が決められており、だいたい年間60万円(から高いところでは100万円)くらいかかります(私立大学はもっとです)。これを月々や学期ごとに徴収されます。

したがって、休校中に学校からのアクションがなにもない場合、学校が何もしなった期間の授業料を返してほしいと保護者から求められる可能性があります。

 

実際にいくつかの私立大学では、春学期がすべてオンライン授業になったことに伴い、学生から、授業料の返還や減額を求められています。

 

私立学校は、行政からの補助金と授業料で経営されており、予算や決算の仕組みは民間企業とほとんど同じです。大きな施設整備の投資は計画的に実施していますが、それでも、公立学校よりは柔軟に必要なお金を必要なタイミングで使うことができます。また、会社の取締役会にあたる理事会が「このお金が必要だ」と判断すれば、行政ほど年度に縛られず、支出ができます。

 

したがって学校は、授業料の返還を求められないように、休校になっても、必死にお金を使って、学校から生徒に対してオンライン授業の提供などのアクションを行い、授業料の徴収を納得してもらおうとします。

 

私立学校は授業料の収入がないと、教職員の給料が払えません。学校施設の維持もできません。なので授業料を払ってもらうために必死です。

先生も、生徒からの授業料が基本的には自分たちの給料に直結していることを知っているので、授業料=給料がなくなると困るので、やれと言われたら、何としてでもオンライン授業の準備をします

 

公立学校については、教育委員会がオンライン教育をすぐに行うようにとは言わないのではないかと思います。そもそも予算も設備もないのに学校現場に「やれ」とは言えません。

 

そして、公立小中高等学校は、授業を行わなくても、先生の給料には直結しません。

 

公立小中学校はそもそも義務教育で生徒から授業料を徴収する仕組みではありませんし、公立高校の授業料は現在月に1万円弱です。しかも、年収910万円未満の世帯は無料です。公立高校でも、先生の給料を授業料から支出する仕組みにはなっていません。

 

 

 

家庭のオンライン環境の整備の問題

 

家庭のオンライン環境にも、公立学校の生徒と私立学校の生徒や大学の学生で差があると考えられます。

 

私立学校については、オンライン授業を行うことで、顧客である保護者から賞賛されることはあっても、家庭にオンライン設備がないからオンライン授業をしないでくれという苦情を言われることは、おそらくありません。

私立学校にも、進学校から学力困難な学校、通信教育の学校まで様々な学校がありますが、どのような学校でも、学校側がオンライン授業を行うことに対して、家庭にオンライン機器がないから授業を受けられなくて不公平だと学校に直接苦情を言う保護者はいないか、とてつもなく少ないです。

これは、私立という環境を選ぶことができる家庭だからという理由が大きいと思います。また私立学校は、多少苦情があったとしても、上に述べた授業料の問題から、オンライン環境がない家庭のためにオンライン授業を行わないという選択を取りません。

 

かたや公立学校では、学校でオンライン授業が始まると、家庭にオンライン機器がないためにオンライン授業の恩恵を受けられない家庭から、学校に対して苦情が出ます。そして学校は、その苦情にまじめに対応しようとします。

いくら多数からの賞賛があっても、1つ苦情が来ればその1つに全力で対応しようとするのが公立学校です。しかし、学校にはオンライン機器や通信環境を家庭へ提供できるだけの機器や予算はありません。

 

結果、その「できない」家庭に合わせて、みんなやらない、という方向に進んでしまいます。

 

本来は、オンライン授業に対応できない層にはオンライン機器や通信環境の補助を模索しつつ、オンライン授業に対応できる層に対しては早期のオンライン授業を行うことが望ましいです。

補助が遅れて、オンライン授業を一定期間受けられない層が発生しても、大半のオンライン授業が受けられる層をターゲットにオンライン授業を行う方が、全体の学力や教育レベルは上がります。

 

しかし、公立学校は、学力平均を上げるよりも、学力の底上げに力を入れます。そして、学力と所得には相関関係があるため、オンライン環境が整わない家庭は、学力も底にいる可能性が高いです。したがって、公立学校は、その底を切り捨てて、学力を上げることに消極的になるのです。

 

行政からの補助の問題点

 

なお、各家庭へのオンライン機器や通信環境を行政が補助する場合、その家庭が補助にふさわしいか(=低所得かどうか)を判断することになります。すると、低所得で補助が受けられる家庭はオンライン環境が整いますが、所得はそれほど低くなくても、オンライン環境の整備にはお金が使える状況でない、もしくは子どものオンライン環境の整備が必要ではないと考えているような家庭には、オンライン環境の補助されないということが起こります。

 

行政は補助の対象となる所得かどうかを課税所得で判断するため、補助対象にはならないが可処分所得は低いという家庭もあります。 

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また、補助するとしても、申請や所得を調べる作業などが必要となり、補助自体が遅れていきます。

 

こうしていつまでたっても、全家庭でオンライン授業の環境が整うことはなく、オンライン環境の整備が整わない家庭からは、いつまでも苦情が出るため、学校はオンライン授業に向かうことができない、という悪循環に陥ります。

 

 

 

家庭の協力体制の問題

 

また、家庭の協力体制にも公立と私立で差があります。 

 

新型コロナウイルス感染症による3月4月の休校期間中、公立学校に通わせている親からは、宿題が多すぎるとか、子ども一人では勉強できないから結局親が苦労するとか、オンライン授業も小学校低学年では一人でできないとか、様々な苦情がネット上で散見されました。

 

公立学校の先生たちからすれば、休校期間中の勉強のために宿題を出すという行為だけでこれだけ苦情にさらされるなら、さらなる苦情にさらされるかもしれないオンライン授業という新しい取り組みに対し、積極的に取り組めなくなるのは当然です。これは公務員だからという問題ではなく、民間でもでも同じです。苦情が多く疲弊することが想定される仕事には、なかなか積極的には向かえません。

 

苦情や批判は、それが妥当なものであったとしても、相手のやる気や活力を削ぐことが多いです。妥当なものでなければいわずもかなです。

 

 

一方、私立学校に通わせている親から、宿題が多いとか、やり方が分からないとか、オンライン授業の準備をするのに手間がかかるいう苦情がネットやSNS上で表面化することはありませんでした。

 

もともと、私立学校に通わせる親は少数派であるため、ネット上の不満の数も少数にとどまるであろうことを差し置いても、私立学校に通わせる親からは、学校が「これだけやってくれてありがたい」「もっとやってほしい(足りない)」という声のほうが多かったように思います。

 

 

また、子どもたちにもSNSが広がったこの時代では、子どものITリテラシーにも差があります。先生が配信した授業動画に対し、下手だというコメントをつけて、勝手にYoutubeやSNSにアップされる可能性も0ではありません。

 

授業が下手な先生については今後授業力の研鑽が必要ですが、だからといって、ネットで全世界から批判されて笑いものにされていいわけではありません。

 

 

私立学校については、下手な授業の先生をYouTube晒す行為は、自分の学校の評判を落とすことにつながるため、生徒はともかく保護者は、高いお金を払って通わせている子どもの学校の授業が、SNSで拡散して批判されるようなことは望まないでしょうから、家庭での子どもに対する指導が見込めます。学校も授業レベルを維持するよう先生方を指導するでしょう。 

なお、私立学校については、学校が特徴的で特定されやすいので、うかつに保護者も文句が言えない、という可能性はあります。 

 

そして、私立学校は、問題行動を起こした生徒に対し、退学等の処分を行うことができます。オンライン授業の内容をネットに晒さないように指導をし、それに違反した生徒に対し停学や退学の処分を行うことは、私立学校については、生徒指導の1つの方法として可能です。

 

しかし、公立小中学校ではそもそも退学処分どころか停学処分さえできません。義務教育ではない公立高校でも、生徒を退学処分にすることは、ほとんどありません。指導して指導して指導し続けるのが、公立のやり方ですが、しかし、指導の間もSNSは炎上します。

 

 

このように、家庭の協力体制の差や処分の差も、公立学校でオンライン授業が進まない一因になっているように思います。

 

 

まとめ

 

これから冬に向かうにつれ、新型コロナウイルス感染症がさらに広がるのか、抑えられるのかは、私には分かりません。

 

しかし、感染が拡大した場合、オンライン授業への取り組みが今以上に必要になることは分かります。

 

オンライン授業を進めるためには、学校、家庭、行政(教育委員会)が、それぞれ必要なことをきちんと準備することが必要です。そしてそれは、感染症が広まってからでは遅いです。

 

オンライン授業の恩恵を受けるのは、子どもたちです。子どもたちの教育の機会を確保するために大人がすべきことは何なのか、今一度、社会全体で考えるべきだと思います。

 

 

 

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