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一律10万円の給付金 なぜ世帯主への給付なのかを考えた

先日、「10万円の給付金を世帯主以外が受け取る方法」という記事を記載しました。

 

www.workingmother-rikumiler.com

 

 

この記事で、マイナンバーカードによる申請であれば、個々人の申請となり、世帯主以外でも受け取れるのではないか、と記載していましたが、これは誤りでした。

 

マイナンバーカードでの給付金申請でも、世帯主が一括で申請し、世帯主以外が給付金を申請することはできないルールとして、統一されたようです。

 

誤った情報を掲載し、大変申し訳ありませんでした。

 

 

したがって、同居中の場合、10万円の給付金を世帯主以外(主に妻や子)が受け取る方法は、令和2年4月27日までに世帯分離をする、という方法しか、なかったことになります。

 

よって、現時点では、DV等による避難(で別居している)以外の理由で、世帯主以外の人が給付金を受け取る方法はなさそうです。

 

そこで、今回の給付金、なぜ、世帯主への給付しかできなかったのか、誤情報へのお詫びもこめて、考えてみました。

 

 

 

行政コストの問題

 

まず第一に考えられるのは、行政コストの問題です。

 

今回の給付金に限らず、行政から、郵送で何かが送られてくる場合、たいていは、世帯主の名前で送られてくると思いませんか?

 

例えば、選挙の際に送られる、「選挙通知書」(選挙の案内や、入場券?のようなものが送られる)を思い出してください。「選挙通知書」は、世帯主以外の18歳以上の方の分も、世帯主に一括で送られてきます。

 

選挙の通知書は、基準日時点での、住民基本台帳に基づき、作成されます。住民基本台帳に基づき作成される、という点は、給付金の申請書と同じです。

 

住民基本台帳は、住民基本台帳法に基づき作成されており、住民基本台帳は、市町村長が、個人を単位とする住民票を世帯ごとに編成して、作成すると決められています。

 

したがって、住民基本台帳の編成は、世帯が基本となっているのです。

 

郵送代

行政が、何かの書類などを、住民に送るときは、この住民基本台帳に基づいて、処理を行うことが多いようです。(住民を管理する台帳が、住民基本台帳であるため)

 

広く何かを国民に周知したり、通知したりする場合、世帯主以外の方についても個々に文書を送付しようとすれば、多大な郵送代が発生します。

 

例えば、選挙通知書を、今の世帯主に一括送付ではなく、個人に送付するようにすると、郵送代は、今の2~3倍かかることになります。

 

もし、選挙通知書が、夫、妻、18歳以上の同居する子ども(例えば高校3年生の分)と、何通も市役所から送られてきたら、きっと、「1つにまとめればいいのに、郵便代がもったいない(怒)」と思う人が出てくるでしょう。

それはそうです。郵送代も、私たちが支払っている税金ですから。

 

給付金を個人給付にし、個人宛に発送する場合は、郵送代が、今より2~3倍かかることになります。

 

行政の手続きのコスト

 

また、コストは、郵便代だけではありません。

 

行政側が手続きをする際も、個人送付に変更すると、今の2~3倍の書類作成、チェック、封入の作業が発生します。

 

また、その後、申請された際の処理についても、2~3倍の作業が発生します。

 

選挙通知書であれば、通知書を作成し、送付するだけで、行政手続き自体は終了します。

 

しかし、今回の、給付金の場合は、申請書が送られた後、書類をチェックし、振込手続きを行う必要があります。書類をチェックして、添付書類を確認し、振込先をデータ入力して、振込手続きをする、という、たくさんのタスクがあるように思います。

 

これを、世帯主以外の全員分の処理をするには、2~3倍の手続きコストがかかります。また、2~3倍の手続き時間もかかると思われます。

 

 

なお、今回の給付金は、国の事業ではありますが、国は費用を負担するだけで、事務は市区町村が行うことになっています。

 

国民の要望(苦情)を受け、早く給付を始めたかった国は、市区町村の事務負担を減らして、市区町村に事務を受けてもらいやすくするために、市区町村が対応しやすい、世帯主に給付という設計を行ったのかもしれません。

(調べてみると、給付金の事務に必要な事務費も、国から市町村に補助されます。国は、事務費を削減するために、チェック回数が少なくて済む世帯主給付にしたとも考えられます)

 

 

 

家父長制のなごり

家父長制とは、父系の家族制度において、家長が絶対的な家長権によって家族員を支配・統率する家族形態や、その原理に基づく支配形態のことです。

 

もともと、国は、戸籍をもとに国民を管理していましたが、戸籍では、住居実態を追えないということで、住民基本台帳による管理に移行してきました。(そして、マイナンバーによる個人管理にシフトしていこうとしています。)

 

明治時代の戸籍では、戸長、家長という概念がありました。戸主の管理のもと、家制度を維持する、という考え方です。

 

今でも、「跡継ぎの男の子」を求められたり、子どもが女の子ばかりの家では、「養子」を求められたりするのは、この名残でしょう。

 

国民全体に広く10万円を支給する、という制度について、「世帯主」に給付すれば、それはすなわち、家全体に給付されたことと同じである、という考え方は、この家父長制の考え方が、根源にあるように思います。

 

今では、共働きも増え、男性と同じように稼ぐ女性や、家計を別にしている、家庭の事情等により別居している家庭もたくさんある中、「世帯主=ほぼ家長」に給付すれば、国民全員に一律給付したことになる、という考え方は、時代遅れです。

 

世帯主に世帯人数×10万円を給付しても、それは、全国民に一律10万円給付した、とは言えず、ただ、「世帯人数×10万円を世帯主に給付した」ということにすぎないんですけどね。給付金の「一人一律10万円」のうたい文句を、変える必要があります。

 

素早く給付する他の方法がなかった

 

そうはいっても、今の行政の住民管理方法では、住民基本台帳に基づき、世帯主から申請を受けるか、住民基本台帳の世帯のくくりの中にある住民票に基づいて、住民票を持つ個人から申請を受けるか、しかありません。

 

行政では、基本的に、民間よりICT環境の整備が遅れています。今でも、ほとんどの行政への申請が、紙申請で、印鑑も必要で、窓口に提出、という状況が、すべてを物語っています。

 

今回の給付金でも、おそらく、行政職員が、提出書類を目で見て、チェックして、口座などを手入力して、給付するのでしょう。これが個人申請になり、2~3倍の申請書が出てくる、となれば、いったい、どのくらいのチェック期間がかかるのでしょうか。いつ給付できるようになるのでしょうか。

 

加えて、行政は、不正受給を極端に嫌がります。

 

「外国では、不正受給はあるものという前提でまず給付して、後から不正受給を追求しているのだから、日本も同様にすればいい」という主張も見かけますが、

外国(アメリカやヨーロッパ)では、行政から不正に受給した「不当利得」に関する返還について、裁判での回収以外に、債権管理会社に債権を渡して回収をさせる(まぁ、いわゆる取り立て屋に債権を渡す)、など、様々な回収方法があります。日本でも問題になっている給食費(ランチ代)の滞納なども、外国では、この方法で、債権回収業者に回されたりします。

 

一方日本では、行政に発生した債権については、税金以外は、行政職員が、根気よく、「返還してくれ」と通知をする以外にありません(税金は強制徴収ができたはず)。

外国のように、行政の債権を、民間回収会社に渡すということは、おそらくありません。

日本で、滞納していた給食費を債権回収業者に売り渡されたため、家に債権回収業者が来たなどという話は、聞いたことがありません。

 

したがって、日本では、行政に、毎年膨大な「不良債権」が発生しています。

 

不正受給した給付金10万円(家族が多くても、せいぜい数十万)を、裁判で回収するには、費用も時間も人件費もかかりすぎて、たぶんできません。

不正受給分を返してくれ、と連絡しても、きちんと返す人ばかりではなく(不正受給をするような人は、特に返してくれない可能性が高い)、返してくれない場合は、ずっとずーっと、行政職員が督促し続けなければならない、こういう制度のようです。

 

こうなると、行政職員が「極力、不正受給がなくなるように」と、「世帯主給付」にして、世帯全員分を一つの口座に振り込んで、管理してしまうという制度設計をしてしまうのも、いたしかたないように思います。

 

この、世帯主をもとにした管理を、個人管理にシフトするため、国民全員を個々に把握できるように、と、考えられたのが、マイナンバー制度です。

 

これは、産まれた赤ちゃんでも、すぐに、マイナンバーが与えられますので、番号で個人を管理できます。

 

また、大きなマイナンバー管理システムがあるため、自治体が住民をシステム管理することもできそうです。

 

このマイナンバーを使い、マイナンバーカードでの電子申請しかできないとしてしまえば、個人からの申請や、早期の個人給付が可能だったのだと思います。

 

国民一人一人が、カードで電子申請し、システム上、二重申請を防止する仕様にしておけば、二重申請もありません。国民自身が情報を入力するため、チェックやデータ作成も、容易で短時間です。

 

今回の給付金でも、マイナンバーカードは個人のカードなのに、世帯主給付の概念を持ち込んだため、申請者が世帯主で、申請内容に世帯構成員全員が入っているか、マンパワーを使ってチェックする必要があり、市町村の職員が大変だ、という状況が発生しています。本来、マイナンバーカードは、個人申請、個人給付に向いている仕組みなのです。

 

しかし、マイナンバーカードの普及率は、現在15%程度です。これでは、オンライン申請を基本とすることすらできません。

 

今回の給付金でも、オンライン申請をやりたいのにできない人が、市町村窓口に殺到して、三蜜が発生するという、残念な状況になっています。

 

まとめ

 

私は、今回の給付金で、世帯主に一律に全員分を給付する、という仕組みを取ったことには、反対です。少なくとも、一括給付か、個人給付か、選べるようにすべきだったと思います。(申請の時に、振込口座を複数記載できるようにするなど)

 

しかし、一括給付か個人給付を選べるようにするためのツールとして、行政のマンパワーに頼る方法では、限界があります。

結局、迅速をとるか、国民の便利をとるか、みたいになってしまいます。

給付金の趣旨として、「簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行う」ということがあったので、今回は、迅速を取って、便利を捨てたのでしょう。

 

そして、現時点で、国民の個人管理に一番適していそうな、マイナンバーカードの普及が、全然進んでいません。

 

もし、国民の90%以上が、マイナンバーカードを所持していて、かつオンライン申請が可能だったら、制度設計時に、個人申請個人給付の方法も、視野に入っていた可能性があります。

 

共働きが増えた現代の社会において、行政に対して、世帯や夫婦単位ではなく、「個人」を大切にしてほしいと主張するためには、私たち自身も、マイナンバーカードの取得や、ある程度の行政への協力(オンライン環境の整備)が、必要になってくるのかもしれません。

 

 

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